2008年5月10日土曜日

【政策提言】タイエアアジアを使えばできないことはない

 AirAsiaX(D7)が、2010年に開港を予定している茨城(百里)空港(茨城県小美玉市)を使って、東京~クアラルンプール線を就航させる計画を持っていると、一部報道機関が報じました。しかし、現時点でもAirAsiaの日本就航は、協定上は問題がなく、許可を申請すればすぐにでもOKのはずなのです。董事長ふくちゃんは、AirAsiaグループの一刻も早い日本就航を実現させることが読者の利益、そしてタイの国益にもなると考え、今日は情報から離れた政策提言を書きます。

 マレーシアから日本への直行便を飛ばすには、AirAsia(AK)が保有しているエアバス320型機では、航続距離が不足しできません。エアバス333型機を持っている長距離部門、AirAsiaXでなければならないのです。航空行政上も、日本とマレーシアの間に結ばれている現在の協定では、就航できる航空会社に割り当てがあり、日本航空インターナショナル(JL)とマレーシア航空(MH)、それにアメリカからの以遠権を持っているノースウエスト航空(NW)とユナイテッド航空(UA)以外の会社が就航するには、航空協定の見直しが必要です。しかもAirAsiaX自体、まだ始まったばかりの会社。注文しているエアバス333が一定数揃うには、それなりの時間がかかります。
 しかし、AirAsiaグループにはタイエアアジア(FD)があり、タイと日本の間には事実上のオープンスカイといってもいい協定が結ばれているので、バンコク・スワンナプン空港からの路線であればいつでも開設できるのです。

 2007年11月に改定された最新の日泰航空協定では、成田国際空港への乗り入れに限りタイの航空会社全体で週21便という発着枠があります。この枠はタイ国際航空(TG)がすべて使っているので、成田空港への他社の就航は事実上できません。
 ですが、成田以外への就航については会社数、便数、乗り入れ地点とも無制限になっていて、国土交通省は届出があれば就航を認めないといけません。ですから、「外国航空会社の定期便乗り入れ許可」を今申請したとすれば、審査に最大3ヶ月かかったとしても、お盆明けまでの運行開始は可能です。現時点で、AirAsiaX、タイエアアジアのどちらも許可申請を出したとの情報は入っていませんが、やろうと思えばすぐにでもできます。
 機材的にも、バンコクから日本ならエアバス320でなんとか直行便が飛ばせる距離にあります(エアバスジャパンのHPによると、エアバス320の航続距離は標準で5,550km)。過去にはバンコクエアウェイズ(PG)がバンコク・スワンナプン空港と広島、福岡両空港の間に、タイエアアジアのそれと同じ、全席エコノミークラスのエアバス320で直行便を出した実績があります。現在は、同型で乗客数を少なくしたエアバス319(航続距離最大6,800km)を使って直行便を飛ばしています。バンコク~沖縄であれば現在直行便を運行している会社がなく、またタイエアアジアが保有しているエアバス320で十分直行できるので、開設すれば採算が取れる可能性は高いと考えます。
 また、タイと日本の間にどこかの国を経由する便を飛ばす権利が日泰双方に週21便(毎日3便)ずつあるにもかかわらず、タイ側はタイ国際航空が週7便分(TG621/620:バンコク~マニラ~関空)しか使っていません。残る週14便分(毎日2便)の枠を使えば、経由便で本州各都市への就航もすぐにできます。タイエアアジアには深圳(中国)、マカオへの便がありますので、これを応用して例えば「バンコク~マカオ~名古屋(中部セントレア)」といった便を組むことができるのです。日本はマカオ特別行政区との間にも、タイとまったく同様のオープンスカイ協定を結んでいますので、問題はありません。機材面でも、香港エクスプレス(UO)がB738で名古屋~香港線に就航していることを考えると、楽勝でしょう。

 日本からタイに行く渡航客数と、日本からマレーシアのそれを比べると、決定的な差があります。日本からタイへは年間100万人程度の流動があり、一方マレーシアへは30万人程度(飛行機で直接入国する人数のみ)です。これに対し、航空会社の提供座席数の合計は増えるどころか横ばいになっています。この数年でエアインディア(AI)、ビーマンバングラデシュ(BG)、エジプト航空(MS)と相次いでバンコク経由の日本便を取りやめたため、安くタイに来ることが難しくなっています。タイエアアジアが日本線を就航させれば、ビーマンバングラデシュが出していたバンコク発の1年オープン往復運賃(13,000Bt.)よりも安くなることは確実なので、タイを最終目的地とする観光客はもちろん、タイを経由して他国へ向かうバックパッカーの流動も回復させることができるはずです。

 AirAsiaグループの英断を、読者とともに期待します。