2008年11月5日水曜日

なぜだ!辰吉KO勝ちも次戦ダメ!!

10月26日(日)、ラチャダムヌンスタジアム(ポンプラップ区)で行われたプロボクシングノンタイトル10回戦。バンコク・チューワッタナジム(前記事「プロのための実践練習!チューワッタナジム」参照)を拠点に現役復帰を模索していた元WBAバンタム級チャンピオン、辰吉丈一郎選手(大阪帝拳ジム所属)が実に5年ぶりとなるリングに立ち、同じジムの若手、パランチャイ選手を相手に2R2分47秒、TKOで復帰戦を飾りました。
 しかし、この試合が組まれたことに日本ボクシングコミッション(JBC、東京都文京区)がケチをつけてきました。競技としてのボクシングを純粋に楽しみたい選手の気持ちにも、応援のためなら海外まで行くというファンの気持ちにもそぐわない、一言で言うならまったく利益にならない今回のJBCの対応、何なんだと言わざるを得ません。


JBCは、辰吉選手に現在交付しているライセンスがトレーナー」(指導者資格)で、ボクサー」(選手)ライセンスは既に失効していることを最大の理由にしてきました。JBCが発行したボクサーライセンスは本来なら満37歳の誕生日に自動的に失効します。それ以降も試合を継続する、即ちライセンスの更新を受けたいならば、以下の条件を満たす必要があります。

1.世界タイトルマッチ経験者または東洋太平洋(OPBF)王座獲得経験者
2.最後の試合日から満60ヶ月(5年)を経過していないこと
3.試合前後にコミッションドクターによる厳重なチェックを受けること
4.選手の実力に見合うマッチメークをすること(日本国内での開催であればタイトルマッチかそれに準じるレベルに限る)
5.試合に勝ったとしても、その内容が著しく悪い場合には次戦を認めず、引退勧告処分とする。従わない場合はライセンスを剥奪する

 さらに、それが海外での試合であるならば、以下の基準が追加されます(前記事「17歳以下の日本人ボクサー、来タイ不可能に」参照)

1.本人は「ボクサー」(選手)ライセンスの発行を受け、直近1年以内に更新されていること
2.「マネージャー」(興行実務担当者)ライセンスを持ったマネージャーが同行すること
3.海外遠征届け、および報告書を遅滞なく提出すること

JBCはまず、辰吉選手が網膜裂孔と網膜剥離という重大な目の疾患を経験していることに注目。所属していた大阪帝拳ジム(大阪市)に連絡し、会長が試合出場に難色を示したためライセンスを拒否するつもりでした。これを辰吉選手は拒否。そこで辰吉選手が行った前回の試合日に注目してきました。2003年9月26日、大阪市立中央体育館で行われた対フリオ・アビラ戦で、既に5年1ヶ月を経過しており、「最後の試合日から5年を経ないこと」という条件を満たさないとして、ライセンス発給を拒否したのです。

このため、辰吉選手サイドはチューワッタナジムのアンモ会長に連絡を入れ、タイでのマッチメークを依頼。当初はチューワッタナジムにいるタイスーパーフライ級チャンピオンとの試合が予定されていたのですが、次戦ができると想定して、格下のパランチャイ選手を踏み台にすることにしました。

ところがJBCは「実力に見合うマッチメークをすること」という条件に抵触すると切り出してきました。なんとパランチャイ選手は「噛ませ犬」。外国人選手と対等の試合をするレベルにないとされ、日本で試合に出ることができない「招請禁止ボクサー」の基準に該当していたのです。JBCによりますと、過去1年間に日本での試合で4連敗、または全部KOで3連敗した外国人選手は、翌年4月から1年間、日本での試合をさせないという招請禁止基準があります。また、タイ人選手が日本で試合をするには、タイ国内での試合で7勝以上していることを、TBC(コミッション当局)に確認してもらわないといけません。TBCからJBCに連絡されたパランチャイ選手の戦績は、2勝(1KO)5敗。その5敗がすべて、日本でのもので、しかも全部KO負けだというのです

試合終了後、アンモ会長は日本での興行に備え、11月1日のタイ国際航空648便で福岡空港に到着しました。待っていたのは安河内剛・JBC事務局長。会談の席で「今後JBCからライセンスを受けていない日本人選手を試合に出した場合、チューワッタナジム所属のタイ人選手を全員招請禁止にするという強い態度を示され、アンモ会長は納得して謝罪しました。この結果、辰吉選手の次戦は事実上、不可能になってしまいました。