2009年2月20日金曜日

「闇の子供たち」タイでも大反響!!

(画像協力:唐崎正臣さん/Digital Network Asia社長)
 2月19日(木)夜、バンコク・チットロムのFCCT(外国人記者クラブ)で、映画「闇の子供たち」のプレス向け上映会が行われました。バンコク国際映画祭で招待作品として上映される予定になっていながら、直前で観光スポーツ省の横ヤリを受けて中止になってしまった問題作です。
 董事長ふくちゃんは、作品のタイ側プロデューサーを務めた唐崎正臣さんから招待を受け、出席しました。会場には200人近い報道陣に加え、バンコク日本文化センターから吉川竹二所長が訪れ、超満員となりました。

 作品のメガホンを取った阪本順治(さかもとじゅんじ)監督は、来年公開予定の次回作「座頭市 THE LAST」が控えているにもかかわらず、今回の上映会に合わせ、撮影の合間を縫って来タイ。その阪本監督が、Traveler's Supportasiaの独占インタビューに応じてくださいました(聞き手:董事長ふくちゃん)。


--ここまで相当の時間がかかったが。
 反響と議論を巻き起こすのは覚悟の上。タイでの上映がスムーズに行かないことも承知で進めて、撮影から2年近い月日が経ってしまった。

--実際の撮影はいつ、どこで?
 2007年4月の1ヶ月間で撮り切った。ロケ地はバンコクとチェンライ。バンコクでは、ブラティパット通り(パヤタイ区)に宿を取ってその周辺でロケ可能な場所を探した。チェンライはミャンマー国境に面したメーサイ市での撮影。わずか4日間で完了させる強行軍だった。

--実際に人身売買の被害を受けた子供を使おうと思わなかったのか?
 できなかった、というより「あえてしなかった」。被害の状況を再現させることで、子供たちにとってトラウマが残ったりPTSDになったりしかねない状況を作ってしまうことは避けたかった。
 そこで、売春という職業を完全に理解でき、「演技と割り切れる」子供たちを意識的に選抜した。
 だからと言って、日本で選んだ日本人の子役をタイに連れてきて撮ってもダメ。タイの子役は人生経験として見てきたものが違う

--どこまでが現実でどこからがフィクションか、という指摘があるが。
 「劇映画にできること」と「ドキュメンタリーの仕事」を言われたら、僕は映画人である以上、やはり劇映画としての可能性を追い求める。ノンフィクションとして監督1人で撮ったら?という声も聞かれるし、それだけの物的環境も整ったけど、そこで映画人たる「監督としての覚悟」と、興行ビジネスに携わる者としての「プロデューサーの意図」の衝突は避けられない。

--映画として何を伝えたかったのか?
 少なくとも「アジア=日本人にとっての癒しの場所」という既成概念は覆したつもり。見た後で何を考え、どう動くかは観衆一人一人に任せている。

--主人公が自決するという、バッドエンドにしたのはなぜか?
 監督としてはそれしか頭になかった。というより、一番最初にラストシーンが浮かび上がり、そこにつなげる形で脚本を作っていった。従って、原作(梁石日著、幻冬舎文庫)とは各配役の動きが一部異なる。しかも、ラストの部分は監督のオリジナル。

--演出として気をつけた点は?
 子供たちの視線には特に気をつけた。児童買春しか頭にない大人たちを「なぜ私たちだけがこんな目に?」と見返すような、強い気持ちを出すように求めた。

--日本の大物俳優がなぜに低ギャラでも出てくれたのか?
 俳優は「他人を演ずる」仕事ゆえ、他人を理解し、自ら進んで見聞を広めることができなければ無理。今回の作品には江口洋介、宮崎あおい、妻夫木聡とトップスターが揃ったけど、彼らにとっても「チャレンジのつもりで」出てくれたんじゃないかな、と思う。

 タイに来る目的が買春しかない「外道者」と呼ばれる旅行者や、ストレスの捌け口が風俗だけという駐在員の方に、是非一度見ていただきたい一作です。あなたのアジアに対する見方が間違いなく変わるでしょう。
 阪本監督からは、家庭向けディスクの発売が決定したと発表されました。2月25日(水)に日本国内のショップに並ぶ予定。DVDは4,935円、ブルーレイディスクなら6,300円(いずれも消費税込み)。