2009年5月14日木曜日

スーパーリッチが円現金不足に悩む!?

 バンコク最大の民間両替商「スーパーリッチ」(パトゥムワン区)が、景気の悪化でちょっとした悩みを抱えています。日本円の在庫が不足して、バーツから円への両替に応じられない日があるというのです。円からバーツへの両替は、通常通り受けています。

 事の発端は、昨年9月のリーマンショック以降の景気悪化による、日本人駐在員の帰国ラッシュ。駐在員世帯はバーツで受けていた給料を円に戻さないと、帰国後当面の生活費に困ります。そこで一度に数百万円単位のバーツから円への両替が殺到したといいます。しかし、それだけではありませんでした。


 タイ在住中に勤めていた会社の預金通帳を盗み、公金を引き出したとして逮捕されていた菅原秀樹(すがわらひでき)容疑者(56歳)が、引き出したバーツ現金を円に両替していたことが警視庁組織犯罪対策部第2課の捜査で明らかになりました。
 菅原容疑者は、勤め先では現地採用組のトップとして経理を担当していましたが、

「嫌気が差してきたので辞めて帰国しようと思い、帰国後の生活資金確保を狙った」

として、2008年11月24日(月)の業務終了後、会社の金庫から通帳を持ち出します。
 通帳は翌25日朝、取引先の銀行に持ち込まれ、1,915万Bt.(5,200万円)もの大金が引き出されます。この大半にあたる1,842万5,000Bt.をスーパーリッチ本店に持ち込んで円現金5,000万円に両替した後、香港の地下銀行経由で日本に送金します。
 しかし、そこへスワンナプームショックが襲います。高飛びしようとした菅原容疑者も足止めを喰らい、12月になってから成田国際空港に帰国します。入国審査を何事もなかったかのように通過しますが、タイ国家警察は会社からの被害届を受けて、既に捜査に着手していました。
 年が明けた2009年1月16日、菅原容疑者は突然、警視庁本庁(東京・桜田門)を訪れました。

「社長の命令でやった」

と供述しますが、その後、社長は被害者と判明。タイから逮捕状が出ているのを確認した上で、4月7日、窃盗罪の国外犯(前記事「白石事件はどう考えても他殺だ」参照)で逮捕します。送金されてきた5,000万円は日本の銀行口座に手付かずの状態で残っていたため、警視庁は東京地方裁判所に没収保全命令(組織犯罪処罰法22条)の発動を要請して、全額を確保しました。海外から送られてきたマネーロンダリング資金を没収保全とするのは、1999年の組織犯罪処罰法施行以来、11年目で初めての事例です。

 タイを舞台に、日本人同士の間で起こった事件では、加害者がタイに残っていれば、タイで逮捕(前記事「死刑相当の否認は許されない」参照)。日本に帰国しているなら、タイから逮捕状が出ていても国際手配されていなければ日本で逮捕できず、国内での余罪で別件逮捕するか、最悪刑法の国外犯制度を使ってでも逮捕する手を選んできました(前記事「浦上容疑者、逃走8ヶ月の末に」参照)。棚橋事件の浦上剛志容疑者は別件逮捕。そして、今回の菅原容疑者は国外犯逮捕となった訳です。

 一度に5,000万円ものバーツから円への両替は、スーパーリッチでもそうそうあることではありません。ちょうど駐在員の帰国ラッシュとも重なって(前記事「スクンビットの飲み屋に閑古鳥」参照)、スーパーリッチは円現金不足に陥る日が出始めたのです。