2009年7月9日木曜日

浦上被告、容疑認める!? 強殺成立が焦点に

 昨年8月、バンコク・ディンデン区のアパートからフリーライター・安田誠さん(本名:棚橋貴秀。当時33歳、岐阜県出身)が姿を消し、その後遺体で発見された事件(前記事「安田誠氏殺される」参照)。ついに、確定的ともいえる証拠が出てきました。
 事件の主犯格と見られ、4月に別件逮捕されていた浦上剛志被告(31歳、大阪府出身。7月1日付で起訴済み)が、棚橋さんのご両親宛てに容疑を認め、謝罪する意思の手紙を認めていたことが明らかになりました。


 4月21日、東京・警視庁本庁に逮捕された浦上容疑者は、帰国後に絡んだアンダーグラウンドビジネス関連の捜査が一通り終わった6月2日、棚橋事件で再逮捕されます(前記事「浦上容疑者再逮捕!高飛びに失敗」参照)。岐阜・山県警察署に移送された浦上被告、アンダーグラウンドビジネスについては容疑を認めていながら、核心とも言える棚橋事件には否認を貫きます。
 しかし、浦上被告は良心の呵責に悩んでいました。

「棚橋さんの故郷の岐阜に来てまで、嘘を突き通す(否認を続ける)のか?」

 6月の終わり、浦上被告は積もり積もった心労で体調を崩します。

「これ以上嘘はつけない」

 それまでの否認から一転、容疑を認める旨を担当弁護士に打ち明けた浦上被告は、棚橋さんのご両親宛てに手紙を書き、弁護士に渡します。

 その頃、共犯として逮捕されていた森宏年被告(31歳、愛知県出身)は分離して公判が進められ、6月18日(木)の公判で結審しました。検察側からは懲役4年を求める論告、それに対し、弁護側は執行猶予を付ける(法律上、懲役3年以下とする必要がある)よう求めた最終弁論。判決期日も6月30日に指定されました。この結果、棚橋事件の核心である殺意と殺害実行について、森被告の口から語られることはなくなり、すべては浦上被告の態度次第ということになりました。
 6月30日(火)、森被告の1審判決が下りました。懲役3年、実刑取調室で報告を受けた浦上被告は、森被告が早々に認めていた棚橋さんの資産引き出しについて、容疑を認める供述を始めていました。

 手紙では、

「殺害と窃盗の両方、自分がやった」

と容疑を認め、

「引き出した1,700万円のうち、今も700万円程度がHSBC(香港)にある。これをお返ししたい」

と述べています。これが事実なら、Traveler's Supportasiaが一貫して主張してきた強盗殺人罪成立の可能性(前記事「安田氏殺害、日本法で処理か」参照)が、一気に高まります。
 また、前記事では棚橋さんの口座から引き出した金融資産を第三国(この場合は香港)に移してマネーロンダリングした可能性があると指摘しましたが、これについても口座の所在が明らかにされ、裏付けられることになります。

 今後の取り調べ、そして近く行われる公判前整理手続きでも、強盗殺人成立の可能性は最大の争点になることが予想されます。容疑が強盗殺人に切り替わると裁判員制度対象事件になります(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律2条)。裁判員の前で浦上被告がどこまで真相を語るか、そして、どれだけの厳しい量刑が下されるか、見てみたいところです。