2009年10月6日火曜日

列車脱線の責任はどこに?

4日午前4時ごろ、国鉄南本線カオタオ駅(プラチュアップキリカン県ホアヒン郡)を通過しようとしたEXP84列車(トラン→ファランポーン)が脱線、機関車と客車5両が転覆して乗客8人が死亡、90人近い負傷者を出しました。死傷者の中に日本国籍者はいませんが、イギリス人1人が肋骨骨折の重傷でホアヒン市内の病院に運ばれています。

 EXP84列車と下りのEXP85列車は、JR西日本(正式社名:西日本旅客鉄道 大阪市、東証1部上場)から中古贈与された「14系15形寝台車」が2等エアコン寝台、「14系座席車」が2等座席扱いで運用されています。列車自体は機関車を除いて14両の長編成でしたが、今回脱線、転覆したのは、荷物車1両、職用扱いの3等車1両、それに日本から贈与された寝台車と客車3両。これが、無用の誤解や極端な反日感情を生む可能性が一部で指摘されています。

(画像:同型の14系15形寝台車。今日はノンカイ行きの運用に入る)


反日を主張する一部左派勢力からは、

「車両を供与した日本の責任。タイはすべての意味で被害者。日本こそ損害を賠償すべき」

という、日本側にしたら許すことのできない極端な意見が上がっています。

「日本製の車両は危ない」

という風評を立てられる可能性も捨て切れません。

「日本製車両を使いこなせない国鉄の技量不足」

とまで言われています。

これに対し鉄道庁は原因を調査中としていますが、現場となったカオタオ駅の職員がポイント(転轍機)の操作を誤った可能性が指摘されています。タイ国鉄は多くの路線が単線非電化で、事故が起こった南本線では、ナコンパトムから先の区間には列車集中制御システム(CTC)が設置されていません。このため、駅では列車の行き違いを行うため、職員が転轍機の操作を行う必要があります。毎日十数回の転轍機操作で慣れているはずの職員が、そう簡単に事故につながるようなミスをするとも思えません。
そうなると次に、現場の天候が雨だったという状況を考慮しないといけません。転轍機上を通過する列車は徐行するのがどこの世界でも常識です。鉄道庁でも、時速20kmという安全基準を設けていますが、雨天であれば尚更、速度を落として通過するのが鉄則。それに対して機関士は、晴天と同じ状況で行けると判断し、通常のスピードで進入したためにスリップした。2005年の福知山線尼崎事故で、制限を超える高速で急カーブに進入したのとよく似た判断を、機関士はしたということになります。

鉄道庁は、日本からの新規の車両導入を当面見送る可能性が出てきました。まずは複線化、そしてタイ側の保線技術と安全意識の向上が優先だと、董事長ふくちゃんも考えます。

(10月13日追加)
反日派の意見を裏打ちするかのように、タイ語紙最大手の「タイラット」が、

「原因として車両の老朽化が考えられる」

と記述していたことが判明しました。確かに14系寝台車は新造から30年以上を経ていますが、それを理由にして車両を供与したJR西日本に責任をすべて押し付けるべきだと、タイラット社は主張したとも解釈できます。
これに対しコメントを寄せてくれたP.N.はなまるさんは、

「日本の中古車で(車両自体に重量があったから)この程度で済んだ、という見方もできる」

としています。14系15型寝台車は普通鋼製で、1両あたりの空車重量は40トン近くあります。軽量化が進んだ今の客車では同型で30トン前後のものもあり、もしそちらが事故ったら、死者がさらに増えることは簡単に予測できます。