2009年11月26日木曜日

バックパッカーを全面否定する仕分け人

 2010年度政府予算編成にあたっては、「事業仕分け」が行われ徹底的に予算の無駄を洗い出そうとしています。外務省関連では、青年海外協力隊やJICAシニアボランティアなど、開発途上国への人材派遣コストが相場よりも高いとして、予算削減を求められました。
 この席上、仕分け人を務めた有識者は青年海外協力隊が日本国内の失業対策と化しているとか、自分探しだとか言っている連中ばかり集めているなどと一方的に批判しました。これは外こもり以前に、日本に折角根ざしかけたバックパッカー文化そのものを完全に否定しかねない暴言であり、到底許されるものではありません。単純に経費のレベルで非難するべきだと、董事長ふくちゃんは考えます。


 時事通信の報道によりますと、

「青年海外協力隊に関し”自分探し”の人(=バックパッカー)をかき集めて、半ば失業対策になっているなどの批判が噴出して「削減」とした」

 というのです。これに対し、他の全国紙各紙は一切触れていません。

 仕分け人のこの発言が事実なら、バックパッカーや外こもりという生き方は日本に根付くはずなどない、根底から認められるものではないと解釈できます。海外現地採用を目指して日本を出て行く人も含め、私たち在外日本人社会に対して極端な偏見があるとしか言いようがありません。駐在員至上主義ともいえる机上の妄言、まさに言語道断です。

 独立行政法人国際協力機構(JICA)が募集する青年海外協力隊員は、4ヶ月の研修を経て本採用が決まると、緑色の「公用パスポート」を受け取って、それぞれの任国へと旅立ちます。公務員と同じ資格で海外に行かせるのですからそれなりの責任ある人、技量を持つ人、即ち優秀な人材でなければならないという建前があるのはわかります。少子化で協力隊員のなり手の絶対数が減っていくのも理解できます。しかし、団塊ジュニア世代が40代を迎えようとする今頃になって、その下(1980年以降生まれ)の世代の失業対策を引き合いに出して非難するのは、筋違いといえるのではないでしょうか?

 青年海外協力隊やJICAシニア海外ボランティアに参加した派遣対象者に支給される経費が、相場より高いというのならまだ理解できないこともありません。JICAホームページにはこの経費は給料や報酬ではないと記述されていますが、一定の支払い基準があり、青年海外協力隊よりもシニアボランティアのほうが経費支給額は大きくなります。
 例えばシニアボランティアでタイに派遣されてくると、現地生活費」として月額US$810(約27,000Bt.)が支給されます。受け入れ先から住居を提供されなかった場合はJICAの指示でアパートを借りますが、この住居費がタイの場合月額US$1,000(約33,000Bt.)まで認められます。

 この基準は、「現地調査に基づき地元民と同等の生活を営み得る水準」とされていますが、タイの場合、バンコク首都圏と地方では極端な差があります。月額27,000Bt.というのは、バンコク首都圏に住むタイ人でもそれなりの技量を持った上級管理職でないと給料としてはもらえません当然学歴は大学卒です。大学を出ていない一般職ですと、月に10,000Bt.台の給料が関の山で、それすらももらえずに売春で補填しなければ家賃を払えないという小売業従事の女性を、董事長ふくちゃんは何度も目撃しています。
 地方で農業に従事していると月額換算5,000Bt.相当の売り上げも得られない例がよくあるといいます。そういう人に27,000Bt.の月収なんて夢のまた夢。特にメーホンソン県では県内の平均月収が3,000Bt.(タイ全76県で最下位)しかなく、バンコク首都圏とは一桁違ってきます。
 それゆえに年頃の娘をバンコクやパタヤの風俗店に出稼ぎに行かせ、稼ぎを仕送りさせる親が未だに多く、娘が金持ちの欧米人常連客と結婚ともなればその家は村で一番の名家に成り上がってしまうのです。

 そんなタイで、27,000Bt.ももらっている協力隊員やシニアボランティアに、地元民と同等の生活レベルなんて分かるはずがありません。しかも家族を呼び寄せれば現地生活費は1.75倍US$1,400(46,000Bt.)も支給されてしまいます。
 日本と全く同じ水準の生活をしようとすると東南アジアでは上流階級になってしまうんです(シンガポールを除く)。ましてや住居費が別に出ていると、その時点で現地生活費は全額、そっくり手元に残って食事や遊興に使える。ボランティア精神で行くのが基本と言っておきながら実は民間企業の駐在員も真っ青の優雅な暮らしをしている人もいます。
 むしろ現地採用者や外こもりすとの方がよく分かっている、とも言えます。現地採用者は、安い給与の中から住居費を捻出しないといけません。ですから借りるアパートは地元民の平均レベルで、バンコク首都圏でもエアコンがついて3,000バーツ台のアパートはあります。10,000バーツも出せばちょっとしたコンドミニアムや最低ランクのサービスアパートメントが借りられてしまいます。

 そういう事実を理解せずに、自分探しのバックパッカーだけをかき集めてという発言がよくもまぁできたもんです。仕分け人の皆さん、有識者を騙るのなら、一度カオサンなりチェンライなりに来て、ご自身の目で現状を確かめていただきたい。バックパッカーや外こもりを一刀両断にするのは、それからにしてください。