2010年1月23日土曜日

現地採用にも入れ替わりの時が?

 2009年12月30日の朝日新聞朝刊1面と2面に、こんな記事が載りました。

「元派遣 新天地はタイ 低収入でも夢はある」

 この記事はasahi.comに掲載されず、紙面のみで展開されたので、ご覧になっていない在外の方もいらっしゃると思います。
 董事長ふくちゃんと、永遠名誉董事長・下川裕治は、この記事を担当した朝日新聞東京本社社会部の大和田武士(おおわだたけし)記者にバンコクで会いました。ネット検索で見つけた情報を参考にして来タイし、現地採用を求める非正規労働出身の日本人が、昨年から急に増えているといいます。

 ところが、日本から現地採用を求めて新規に来る人ばかりではありません。「既存」の現地採用組がステップアップを求めて日本へ帰るという例も、見受けられるようになっています。


 幸子さん(29歳、兵庫県出身)は、大学卒業後すぐからタイで働き始め、現地の日系企業を何社か渡り歩いてきました。ところが昨年末、「日本で正社員として働いたことがない」ということが、自分のキャリアの面でどうかなと思うようになりました。そこで彼女は、現地採用組としての活動に一旦終止符を打ち、「日本でのキャリア」を求めて本帰国しようと考えたのです。
 もともと彼女は、2003年に大学の交換留学で来タイし、留学期間満了と同時に卒業。日本ではなく、タイで就職活動を行いました。旅行者としてのタイは見ていたので、社会人としてより深くタイを見つめたかったというのが、タイで働く最大の理由だと彼女は語っています。
 地場の人材派遣会社に登録し、3社目の面接で採用された旅行会社に入社しますが、仕事が相当きつく、会社と家の往復しかない生活になった彼女。日本と同じスタイルに嫌気が差し、結局10ヶ月で依願退職してしまいます。
  転職先は日本人向けフリーペーパーの編集部。ここで働きながら、翻訳・通訳レベルのタイ語を身につけました。ところが、卒業から5年を経た2009年秋、彼女は本帰国を検討しだします。

「新卒からここまで、日本で働いたことがない。日本の会社で働いてみたい。それが自分のキャリアにとってプラスになる」

 しかし、世界は金融危機の波が襲っていました。会社からは、慰留されてしまいます。

「今あえて、日本に帰国してまで転職する必要はない。不景気の真っ只中で就職しても日本のすべてを見たことにはならない」

 それでも彼女は、日本への帰国を諦めませんでした。2009年12月限りで退職。今年2月には本帰国を予定しています。帰国後は、タイ語を生かせる仕事に就くことを希望しています。

 紙面にもありましたが、優秀な人は何かしらのステップアップ、キャリアアップを求めて転職を目指します。幸子さんのように、タイでそれなりのスキルを身につけ、もっと活躍できる場所を求めて本帰国しようという現地採用出身者はまだまだ少数派です。現地採用で成功した邦人の共通項として、はっきりとした目的、それを貫徹しようという意志、そしてそこで身についたスキルがあると彼女は分析しています。
 幸子さんは最初、「社会人としてより深いタイを見たい」というのが理由だと書きました。それは端から見たら不純な動機かもしれません。しかし、留学生としての経験がある彼女だからこそ、ちゃんとした理由として成立するのです。

 彼女曰く、

「日本で就職できなかった「落ちこぼれ」的な新卒が、タイに拾われる。逆に言えば、タイが拾うという偏見があってもおかしくはない」

 現に、そのような傾向も出てきています。