2010年2月12日金曜日

「ピンク色」のチャイナドレスって…

 中華文化圏にとって最大のお祭り、春節(旧正月)。今年は、西洋のバレンタインデーと重なる2月14日とあり、ここバンコクではチャイナタウンと他の地区が、違う意味で盛り上がることになりそうです。華僑にとっては、春節ともなれば赤色で包まれる季節。しかし、今年のタイはちょっと雰囲気が違います。赤に混じって、なぜかピンク色の服が売られているのです。

 台湾系を中心とする華僑1世の財界人で構成する「泰国華僑協会」(サトーン区)のポンチャイ・ウィモンチャイ主席(中国名:余声清。台湾出身)が、実にタイらしい呼びかけをしました。

「今年の春節はピンク色ベースで行こう。ピンク色はラマ9世プミポン国王のご健康を表す色であるとともに、赤シャツ(UDD)軍との関わりを絶つ意思表示という意味合いもある」


 赤シャツ=タクシン・チナワット元首相支持派、というのは、2年程前からのタイの常識。特に今年は、春節に赤色の服を着ることで、華僑1世はもちろん、その後の世代、いわゆる中華系タイ人まで、春節を祝った人は全員タクシン派だと誤解されかねません。ポンチャイ主席は、赤シャツが原因でタイの華僑社会全体が不利に追い込まれるのを最も恐れています。それだけに、UDD軍を新春の祝賀ムードから遠ざけたい、逆に言えば雰囲気をぶち壊されたくないというところに、今回の発言の真意があるとみられています。

 ところが当のヤワラー通りでは、なぜかピンク色が目立ちません。翌年の旧暦のカレンダーが確定するのを見て、中国大陸のメーカーに縁起物やチャイナドレスの注文をしてしまう商社が非常に多いのです。このために、ヤワラー通りで実際に品物を売る露店や中華系の商店では、年が明けてから違う色の服を注文しようとしても間に合わないといいます。
 バンコクで発行されている英語紙「Nation」は、

「今になってピンク色だなんて遅すぎる」

 という、ヤワラーの商業関係者の苦情にも似た声を伝えました。

 一方、BigCやテスコロータスといった大型ショッピングセンターでは、去年春以降のUDD軍の過激な行動(前記事「UDD軍、敗走」参照)や、昨年12月の国王陛下誕生日の祝賀イベントがピンク色1色になったのを見て、赤色以外のチャイナ服もかなりの量を注文していました。BigCラチャダムリ店(パトゥムワン区)では、2階に設けられた特設コーナーで、ピンク色のチャイナ服が赤や他の色に混じって売られています。ですが、BigCのレジに立つ社員は、なんと一様に赤色のシャツを着ているではありませんか。レジ袋も通常の黄緑色ではなく、如何にも時期に合わせたという感じの赤色。

「春節から赤を外すのは中華文化の伝統に反する」

 という、中華至上的な苦情も一部にはあるようです。