2011年12月17日土曜日

海外現地採用者の奨学金が「出世払い」に

 独立行政法人日本学生支援機構(東京都新宿区)は、大学・高校生に貸与している奨学金の返還が低所得によって滞るケースが続出しているとして、事実上の「出世払い」的な新しい返還制度を導入する意向です。共同通信が17日、政府筋の話として伝えたもので、19日、財務大臣・安住淳(民主党、衆院宮城5区)と文部科学大臣・中川正春(民主党、衆院三重2区)が2012年度予算折衝の席上、そのための予算確保を決定しました。

 日本学生支援機構は、旧日本育英会から大学・高校生に対する奨学金の事業を引き継ぎました。とはいえ、奨学金は「支給」ではなく「貸与」しているもので、卒業後に返還(返済)しなければなりません。機構ホームページでも、

「先輩からの返還金を直ちに後輩の奨学金として貸与するしくみとなっており返還が円滑に行われないと次の貸与に重大な支障をきたすこととなります」

という記述がみられます。しかし、卒業後就職しても所得が低いなどの理由で、なかなか返還金を捻出することのできない元奨学生が増えています。日本を離れ、東南アジアで現地採用として働いている人も日本と海外の給与水準の格差を考えれば、然りなのです。

 現在の制度下で、返還の免除を得るには大学院在学中に特に優れた業績を上げる(具体的には論文が海外の学術雑誌に掲載されるか世界的な賞を受ける)か重度の心身障害で働けなくなるのどちらかしかありません。以前なら「大学卒業または大学院修了後に教員採用、または研究職に就く」という選択肢もあったのですが、大学卒業者は1997年、大学院修了者も2004年の採用者を最後に廃止となっています。免除こそ非常に厳しいのですが、理由があれば返還の猶予を受けることはできます。

1.生活保護を受ける(1年おきに申請して廃止決定まで)
2.病気、ケガで働けない(1年おきに申請して健常な状態に戻るまで)

3.税込み年収が300万円(自営業者は申告所得200万円)に満たない(1年おきに申請して最大5年まで)

4.失業した(1年おきに申請して最大5年まで。ただし雇用保険の給付期間中=退職後6ヶ月以内に最初の申請をすること。退職から7ヶ月以上過ぎている場合は3.の理由となる)
5.高校3年生が大学受験に失敗または大学卒業直後に大学院進学、あるいは専門学校や他大学の3年次編入を目指すなどの理由で浪人した
 (1年おきに申請して最大5年まで。ただし法科大学院修了者が司法試験を受験するなど、各種試験の場合は当てはまらない)
6.高校卒業後に防衛大学校、防衛医科大学校、海上保安大学校、気象大学校、職業能力開発総合大学校に進学した
 (卒業年次まで、高専3年生の進路変更も可。入校後すぐに大学校経由で申し出る)

7.大学卒業直後に青年海外協力隊員として派遣された(帰任まで。出発前に国際協力機構を通じて申し出ること)

 この手続きをしない状態で、4ヶ月連続して日本の金融機関からの自動引き落とし(リレー返還)ができなかったり、海外からの送金による返還を怠ると、機構は「指定個人信用情報機関」の資格を持っているCIC(東京都新宿区)に連絡して延滞情報を登録するとしており、在学中や就職後に日本で作ったクレジットカードが更新できなくなって海外生活に支障が出る恐れもあります。

 機構と文部科学省、それに与党連合(民主党と国民新党)は、理由の3.にある「年収が300万円に満たない」場合の返済猶予期間をこれまでの最大5年から、無期限に延長することで事実上の出世払いを実現する方向で調整を進めてきました。実現した場合、海外現地採用者の多くがこの制度の対象になり、日本に戻るまで返還金を納めなくてよいことになります。

 朝日新聞は対象として、

1.奨学生に採用された時点の親の年収が300万円以下
2.大学院は不可

 という条件があるとしていますが、それでもかなりの数に上ります。外こもりは親が裕福だからできるもので関係ないだろとお思いの方がいらっしゃるなら、考えを改めていただかないといけません。

 タイであれば、ボーナスがないと仮定して月収95,000Bt.(238,000円)以下が返還猶予を受けられる収入基準になります。ワークパーミットを取得できる最低所得が月収ベースで50,000Bt.、実際には20,000Bt.前後の給与しか受けていない人もいることを考えると、タイで働いている日本人現地採用者の過半数が無期限に返還猶予される、つまりは出世払い返還できることになるのです。

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