2012年1月14日土曜日

AirAsiaX、欧州から撤退へ

AirAsiaX(D7)は3月限りで欧州圏とインドへの合わせて4路線を廃止すると発表しました。どちらも運航コストの上昇が主な原因と会社側は説明。加えて欧州圏では昨年の金融危機で旅行需要が減退しているといい、AirAsia(AK)が所有するエアバス320の機体性能の関係上マレーシアからの直行便が組めない日本、韓国など北東アジアに重点を置いてビジネスモデルの再構築を目指します。

《1月31日の運航をもって取りやめ》
D7162 KUL0920~BOM1200   月曜運航
D7166 KUL1800~BOM2040   火・木・土運航
D7163 BOM1315~KUL2055   月曜運航
D7167 BOM2155~KUL0535+1 火・木・土運航

《3月22日の運航をもって取りやめ》
D7172 KUL0950~DEL1300   月・水・土曜運航
D7176 KUL1830~DEL2140   火・木・金・日曜運航
D7173 DEL1410~KUL2210   月・水・土曜運航
D7177 DEL2255~KUL0655+1 火・木・金・日曜運航

《3月30日の運航をもって取りやめ》
D7010 KUL0840~LGW1440   月・土曜運航
D7014 KUL1450~LGW2050   火・金・日運航
D7011 LGW1610~KUL1300+1 月曜運航
D7167 LGW2220~KUL1910+1 火・金・日運航

《3月31日の運航をもって取りやめ》
D7020 KUL0055~ORY0735   火・木・金・日曜運航
D7021 ORY1000~KUL0540+1 火・木・金・日曜運航

このうちデリーへはバンコク・スワンナプーム空港からタイエアアジア(FD)が運航しておりそちらで代替されます。しかし他の3都市へは代替便がないため、既に廃止後の日程で予約している乗客には払い戻しかマレーシア航空(MH)など他の本格航空会社便への振り替えについて、個別にメールを送り相談に乗るとしています。

現在AirAsiaXはエアバス332型機を9機保有していますが、片道12時間を超える欧州へのフライトを維持するには最低3機を事実上の専用と考える必要があります。クアラルンプール・KLIA空港からの飛行時間が比較的短い北東アジアやオセアニア路線へ高頻度で運航できるだけの機材数はまだ揃っていないだけに、今回の廃止は4月以降に行う東アジア南北間路線の増便を見越した機材確保の意味合いが強いのではないかと分析します。
 前記事「AirAsiaX羽田線、デイリー運航へ可能性」
で指摘した通り、AirAsiaXはマレーシア航空が1月末で撤退する予定の東京・羽田空港で発着枠追加獲得を目指しています。また、昨年就航した関空線も好調で増便を検討しており、ANA(NH)をパートナーに8月の運航開始を目指す日本地区子会社「エアアジアジャパン」(JW)が就航すれば、AirAsiaXは東アジアを南北に結ぶAirAsiaグループネットワークの動脈になることを期待されます。そのためには日本側発着枠は喉から手が出るほど欲しいもので、自社運航に加えてエアアジアジャパンへのウェットリース運航も辞さないとなれば、片道の飛行時間が日本~マレーシア間のそれと比べて2倍近くになるKLIA~欧州線は、非効率という判断が出てもまったくおかしいものではなくなります。

一方で、欧州圏へ乗り入れる航空会社には2010年からCO2排出量取引制度による排出権調達が義務付けられており、LCCの特徴である低い運航コストを実現する上で支障になるとも説明しています。ですが、董事長ふくちゃんは本国マレーシアのフラッグキャリアであるマレーシア航空との競争を回避するのが狙いではないかと見ます。MHは年内のワンワールド加盟を予定しており、欧米へのフライトはMHの収益の柱であることから、MHとAirAsiaXの間で激しい競争が起こればただでさえシンガポール航空(SQ)に押され気味のMHをますます傾かせかねず国益を損ねるとの判断もあったと考えられるのです。