2012年10月10日水曜日

カタール航空がスターアライアンスを蹴った理由

カタール航空(QR=QTR、ドーハ)は、国際航空連合「ワンワールド」に加盟する方針を決定し発表しました。中東系キャリアではロイヤルヨルダン航空(RJ=RJA、アンマン)に次いで2社目となるワンワールドメンバーの誕生で、サウディア(SV=SVA、サウジアラビア・ジェッダ)とミドルイースト航空(ME=MEA、レバノン・ベイルート)が今年加盟を果たしたスカイチームに次ぐ地盤を獲得。スターアライアンスは他系列に比べて弱い中東地域で、さらに苦しい立場に追い込まれます。

(前記事「カタールよお前もか!ワンワールド加盟決定」の続きです)

一方で、カタール航空はANA(NH)やルフトハンザ(LH=DLH ドイツ・ケルン、フランクフルト証取上場)といったスターアライアンスキャリアとの関係もありました。ところが2011年末、カタールはルフトハンザとのマイレージ提携を解消してしまいます。一部航空マニアの間では、スターアライアンス幹事社でもあるルフトとの提携を解消した時点で、カタールのスターアライアンス加盟はなくなったのではないかという見方がなされていました。

この最大の理由こそが、Traveler's Supportasiaでも何度となく取り上げてきたスターアライアンスの排他的なビジネスモデルです。過去には中国東方航空(MU=CES)が上海航空(FM=CSH)を買収した際、東航がこのビジネスモデルを承服できず、上航を脱退させた上に親子会社揃ってスカイチームに行くという業界騒然の出来事もありました(前記事「上海航空、スターアライアンスから追放へ」参照)

カタールも2004年から続けてきたANAとのコードシェア運航、マイレージ提携があるものの、ANAやルフトとの関係を尊重してスターアライアンスに加盟してしまった場合、ワンワールド、スカイチーム加盟社はもちろん、アラブ航空会社機構を通じた域内他社との友好関係を続けるのも極めて困難になり、路線政策の面でもスターアライアンスの殻の中で制約されるなど、カタールの経営自体がアライアンスに大きく翻弄されてしまう可能性が高いと会社側では判断します。

一方で、ワンワールドとスカイチームは比較的自由な交流が行われており、アラブ航空会社機構についても制約はありません。隣国サウジのサウディアがスカイチームに加盟したことで地政学的分布の上でもワンワールドに行くのではないかという噂も流れていました。

今後1年程度をかけて行われるワンワールド加盟の準備段階で、カタールはANAとの関係を解消し、メンバー社の日本航空(JL=JAL)と関係を組み直す必要に迫られます。もっとも、ANAではエティハドの成田線、中部セントレア線でコードシェアを既に結んでおり、カタールとの関係が解消しても影響を最小限に抑えられるよう対策を練っています。