2012年12月28日金曜日

何が何だかわからぬ共通ビザ制度!

タイ外務省、カンボジア外交国際協力省(日本の外務省に相当)は、2007年から準備を進めていた外国人向け共通ビザの制度について、正規観光ビザを手始めに実行に移すことにし、12月27日から申請の受け付けを始めました。ところが、システムがなかなか理解しにくいもので、普及するには相当の手間と時間がかかりそうです。

「ACMECSシングルビザ」と名付けられた今回の制度では、1枚のビザでタイに60日間、カンボジアに30日間滞在することができます。これだけ見ると、両国の観光ビザ制度を単純に一緒にしただけということになります(前記事「タイとカンボジアの正規観光ビザ、一本化へ」参照)

ところが、ビザ申請料は一緒になる訳ではなく、タイに1,000Bt.、カンボジアにはUS$20をそれぞれ納めなければなりません。つまり、両国それぞれの大使館で行っていた正規観光ビザ申請の手間が、1回で済むようになっただけということです。

(画像:ノンカイの国境検問所に張り出されたACMECSビザの告知)

しかも、ビザ申請料は最初にビザを申請する際にどちらか一方の国の分だけを支払い、もう一方の国の分は到着時に空港ないしは陸路国境で支払いますタイ発行のACMECSビザでは、在外のタイ大使館に1,000Bt.を支払い、カンボジア到着時にはビザ発給所に寄らずに入国審査場でUS$20を払います。逆に、カンボジア発給のビザはカンボジア大使館にUS$20を支払い、タイ側の検問所では1,000Bt.を払って60日間の在留許可を得ます。

カンボジア側の発表によると、対象となるのは次の国からの訪問者です。

・日本
・韓国
・中国(香港特別行政区を含むがマカオ特別行政区は含まない)
・インド
・トルコ
・バーレーン
・カタール
・アラブ首長国連邦
・クウェート
・イスラエル
・EU圏内のシェンゲン協定参加28カ国中18カ国(モナコ・マルタ・スロベニア・スロバキア・チェコ・ハンガリー・ポーランド・バルト3国を除く)
・南アフリカ共和国
・アメリカ
・カナダ
・オーストラリア
・ニュージーランド

ところが、どちらかの国にビザなしでの入国が認められている国からの訪問客に対しては、従来通りの対応がなされるため事実上意味がないものになってしまいます。

例えば、日本からはタイに30日(空路入国の場合)のビザなし渡航ができますので、タイにビザなしで来た日本人が国境でカンボジアビザを申請した場合、ACMECSビザではなく以前からのカンボジア1カ国のみ有効の観光ビザが発給される可能性があります。カンボジア1カ国だけ有効の観光ビザでは、在プノンペンタイ大使館で正規観光ビザを取得しない限り、タイ側に戻る際にビザなし渡航(在留許可期間15日)で入国することになります。もしACMECSビザが出ても、タイに戻る時にタイ側のビザ代1,000Bt.を払わなければ、ビザなしでの入国が優先されます。
韓国の場合は、タイへのビザなし渡航が90日間認められていますので、本来なら正規観光ビザの発行対象外です。従って尚更意味がありません。

また、ACMECSビザは原則としてシングルエントリーなので、タイに60日間滞在した後、カンボジアに30日間滞在しタイ経由で帰国する旅程では、カンボジアからタイへ入る時がビザなし入国またはビザオンアライバル(中国・インド国籍者のみ)となります。在ビエンチャンタイ大使館(ラオス)などで発行されているダブルエントリーの正規観光ビザは、従来通りタイ1カ国のみ有効です。

ということは、今回のビザで最も恩恵を受けるのは、中国とインドということになる訳です。両国はこれまでタイの在留許可がビザオンアライバルで15日間か正規ビザでも30日間の在留許可しか得られなかったのですが、ACMECSビザ導入で60日間に戻される形です。