2012年12月6日木曜日

HISの航空子会社はなぜタイ国籍なのか?

エイチ・アイ・エス(H.I.S. 東京都新宿区、東証1部上場)は4日、子会社としてタイ国籍のチャーター専門航空会社「アジアパシフィックエアラインズ」を設立すると発表、タイ商業省商業開発局(DBD、ノンタブリ市)で基本定款の登記を完了しました。

(前記事「HISグループのチャーター専門航空会社設立へ!!」から続きます。2分割の2本目です)

JALウェイズ(JO)の前身、ジャパンエアチャーターは日本航空(JL)の子会社であったにもかかわらずなかなか採算に乗せることができませんでした。その結果、拠点をタイに事実上移してJALグループにおける外国人客室乗務員の受け皿へと変わっていきました。

ANA(NH)も国際線運航部門の分離子会社エアージャパン(NQ)を持っていますが、設立当初のチャーター専門会社「ワールドエアーネットワーク」の時代にはまったく軌道に乗らず、1990年代後半から2000年代にかけて6年間も休眠会社化していました。

旧日本エアシステム(JD)も国際チャーター便進出を目指し、子会社のハーレクインエア(JH)を作りますが、まともに機能せず逆に親会社の足を引っ張る結果に。そして、「JJ統合」で親会社もろとも日本航空に吸収されてしまいました。

一方、ASEANの他の国はどうか。カンボジア国籍では、欧州圏への直行便を飛ばすことができない「ブラックリスト」に入ってしまいます。インドネシア国籍の場合、イスラム教の聖地メッカ(サウジアラビア)への巡礼客(ハッジフライト)は確保できるものの日本への流動がタイに比べると少なく採算に乗るかが疑問視されます。 2004年には、関空~デンパサール間に定期チャーター便を飛ばしたエアパラダイスインターナショナル(AD)が、就航から1年持たずに倒産したことがありました。

これに対し、タイではかなり以前から、チャーター専門キャリアが成り立つ素地がありました。プーケットエア(9R)が中古のB747クラシックを買い集め、 イラクPKOに派遣された陸上自衛隊の兵員輸送を受注したのは記憶に新しいところ。オリエントタイ(OX)も創立当初はB747クラシックを買い漁り、スワンナプーム~香港・仁川といった国際線を飛ばしていました。

(画像:ウドンタニ空港にストアされているB742。オリエントタイが購入したものだ)


それら先発企業のレベルではなく、日本と同じ高い水準で運営することができれば、必ず採算を立てられるとH.I.S.は判断、今回の投資を決定したのです。

H.I.S.ではアジアパシフィックエアラインズの社長にボビー・ハック取締役(バングラデシュ国籍)を送り込み、日本スタイルの経営体制を早期に確立する方針。5年後の2018年には、B763やA333クラスの中・大型機10機程度を運用し年間3億US$(90億Bt.=240億円)を売り上げられる規模を目指します。