2013年6月22日土曜日

クルンシ銀行が日系資本に!!

タイ商業銀行5位のアユタヤ銀行(クルンシ=Krungsri ヤンナワ区、SET上場)は、大株主のGEキャピタルが放出するとしていた株の売却先を日本最大手、三菱東京UFJ銀行(東京都千代田区、全国銀行協会加盟)とその持株会社『三菱UFJフィナンシャル・グループ』(東京都千代田区、東証1部・NYSE上場)に決定する方向で最終調整中だと、日本経済新聞が22日付朝刊で報じました。これが事実であれば、日本資本がタイの民間商業銀行の経営権を掌握する初の事例となります。

(画像1:クルンシのバンコク首都圏内にある支店)

アユタヤ銀行はもともと、地場の華僑系資本が中心になって作った銀行です。それがアジア通貨危機後の不良債権処理の遅れを原因にして一時傾き、2007年にGEキャピタルが発行済み株式の4分の1を買収して筆頭株主になりました。この時、金融分野に対する外資規制でGEグループが独自にタイで開業した『GEマネーリテール銀行』をクルンシに吸収合併させています。ところが、GE側が保有株を3分の1近くまで積み増した直後にリーマンショックが襲い、欧米で巨額の損失を出したGEは足元の経営に不安が及んでしまいます。GEは、クルンシ株を売却してタイから撤退するタイミングを探るようになりました。

この過程で、GEはクルンシの企業価値向上に取り組むようになり、個人向けハイヤーパーチェス(割賦販売)部門「ファーストチョイス」をクルンシに取り込んだのに続き、昨年にはHSBC(香港上海銀行)バンコク支店のクレジットカード部門を買収、カード子会社「クルンシアユタヤカード」に統合していました。これにより、クルンシアユタヤカードは一気にクレジットカード業界2位へとのし上がりました。

また、タイ人の間では正式社名のタイ語読みである「タナカンクルンシアユタヤ」(直訳すると「偉大なる都アユタヤの銀行」)に由来してクルンシと通称されていましたが、昨年秋に本格的なCIを導入、コミュニケーションネームをクルンシに統一しました。

(画像2:CIが導入される前のアユタヤ銀行支店。イメージカラーは一緒だ)

一方、GEが保有している株の購入先候補としては三菱UFJ以外にもマレーシア最大手のメイバンク(クアラルンプール、マレーシア証取上場)や同じマレーシアの投資ファンドなどの名前が挙がり、一時はタイの商業銀行3位、サイアムコマーシャル銀行(チャトチャック区、SET上場)と合併という噂まで流れます。三菱UFJは、外国企業が既存のタイ国内商銀を買収すると現在のバンコク支店(バンラック区)を閉鎖しなければならなくなるという規制のために躊躇していましたが、今後成長の予想される分野への投資は待ったなしと判断、GEが保有する全株を引き取った上にTOBを仕掛けて発行済み株式の51%以上取得を目指すことにしました。

なお、NHKテレビは22日朝放送の「おはよう日本」で、「三菱東京UFJ銀行がクルンシを買収する」と伝えましたが、これは厳密に言いますと誤りです。MUFGにはもう一つ、三菱UFJ信託銀行(東京都千代田区、信託協会加盟)も存在しており、両行とも持株会社の完全子会社であることから、三菱東京UFJ銀行は業務を統合こそするものの、単独で動くことはできません。