2013年8月28日水曜日

エアアジア・ジャパンの反省をAWMに生かす!

ANAホールディングス(東京都港区、東証1部上場)とその金融・投資戦略部門を担当する子会社「ストラテジックパートナーインベストメント」(シンガポール)は、ミャンマー国内線3位のアジアンウィングスエアウェイズ(YJ=AWM、ヤンゴン)に出資する方針を決めて発表しました。外資制限いっぱいとなる発行済み株式の49%を取得して事実上買収。実現すればANAグループは日本国外で実際に航空便を運航する子会社を初めて手にするとともに、今年6月に設立されたばかりのストラテジック社にとっても初の投資案件となります。

(前記事「ANA、ミャンマーの新興航空会社を買収へ」から続きます。2分割の2本目です)

一方で、日本経済新聞は8月27日付朝刊で

ANAの真の狙いは、人件費などが安いAWMのコスト競争力を手に入れること。日本の高コスト体質ではASEAN域内で戦えない」 

と書きました。

ANAホールディングスは、この10月で運航を終えるエアアジア・ジャパン(JW=WAJ、千葉県成田市) から、多くの反省点と課題を学びました。エアアジア・ジャパンでは、AirAsia(AK)グループが格安航空会社としての攻撃的な経営スタイルを求めたのに対し、ANAは既存路線の低コスト化を優先したために両立ができませんでした。

運航コストの中でも、燃料費に次いで高い割合を占めるのが、乗務員の人件費です。ANAグループでは2010年から、国際線運航の一部を担当するエアージャパン(NQ、東京都大田区)で外国人の運航乗務員を採用するようになったといいますが、客室乗務員は原則日本国内のみの採用を貫いてきました。エアアジア・ジャパンやPeach(MM=APJ、大阪府泉佐野市)でもこれは踏襲されていました。ところが、AirAsiaグループの場合は日本に比べて物価の低いマレーシアやタイなどを拠点にしているため、それらの国と全く同じ考えを日本に持ち込もうとすると、人件費の高さがネックとなって事業失敗につながってしまいますANAはこの点を研究した上で、中長期のビジョンまで見据えた戦略を描こうとしています。

つまり、日本航空(JL)が旧JALウェイズ(JO)で行ったのとほぼ同じ考え方です。JALウェイズはタイ人の客室乗務員を採用して国際線の運航コスト削減を目指しました。ANAも、AWMをいわば踏み台にしてミャンマー人の乗員を育成し、将来的にはANA本体に登用、総人件費の削減を目指そうという訳です。それを実現するには、AWMの事業を今以上に拡大し、多くの便数を安定した高いレベルで運航できるようにすることが必要となってきます。

「運航・整備に関する安全性・定時性の強化やサービス品質向上にむけた業務支援を行い、国内線・国際線両事業においてミャンマーの他エアラインとの差別化を図り、スピード感を持ってAWAの事業拡大を進めて参ります」 (プレスリリースから引用)

ANAでは、AWMが5年以内にエアバス320ファミリー10機程度の導入を予定していると説明しており、Peachやエアアジア・ジャパン改めバニラエアとの一括注文、さらには今後ANAで退役する予定のエアバス320型機を移籍させるなど、あらゆる可能性を視野に入れています。

ダイヤの面でも、ANAの成田~ヤンゴン線に接続できるように調整を行うとしており、コードシェアについても検討の対象になるとしています。AWMは当然スターアライアンスに加盟していませんので、ANAがコードシェアをすると、他のスターアライアンスメンバーズはコードシェアに乗ることができなくなります。つまり、先にやったもん勝ち。日本とミャンマーの両国で幅広いネットワークを築き、その動脈にANAのヤンゴン便を置くことで、タイ国際航空(TG)やシンガポール航空(SQ)といったスタアラメンバー他社はもちろん、AirAsiaグループをも出し抜けます。

そして、これらの戦略を伝承するのに最適な人物がANAにいます。ストラテジック社の岩片和行マネージングディレクター(MD、日本の社長に相当)です。岩片MDは、エアアジア・ジャパンの初代社長・会長としてAirAsiaグループとの数々の軋轢を経験してきました。

「ASEANの価値観を日本にではなく、日本の価値観をASEANに持ち込めば成功できる

今回の投資決定は、岩片MDのエアアジア・ジャパンでの経験を生かした上の決断であったと言えます。