2013年10月3日木曜日

「非自民企業」日航は本当に虐げられたのか?

国土交通省は2日、2014年夏スケジュールで行われる羽田・東京国際空港(東京都大田区)の国際線発着枠増強について、日本国内キャリアへの割り当てを決定し発表しました。

(前記事「アライアンスの論理がうごめく羽田国際線発着枠」から続きます。3分割の2本目です)

しかし、この決定に日本航空(JL=JAL 東京都品川区、東証1部上場)は猛反発。国土交通省から発表があった直後、Webサイトに羽田空港国際線発着枠の配分に対するJALの見解と題された、異例のプレスリリースが掲載されました。国内報道各社は、ANAホールディングス(東京都港区、東証1部上場)が与党・自民党に対してロビー活動を行い、配慮を勝ち取ったと伝えていますが、果たして本当なのでしょうか。

日航が経営破綻した2010年以降、ANAによる「日航叩き」とも取れるロビー活動が繰り返し行われてきました。その先頭を切ったのは、伊東信一郎ANAHD社長です。現社設立から45/47体制、ロッキード事件あたりまで、常に自民党の大物政治家に左右され続けた頃のANAを知るだけに、伊東社長は日航が民主党政権下で巨額の公的資金を得て再建したことを良く思っておらず、これがANAの方から自民党に接近した原因となっています(前記事「SKYがANAを公然批判『JAL再上場に賛成の意見書」参照)

一方、公的管理下に入った日航の再建を託された稲盛和夫名誉会長は、民主党以前の旧新進党の時代から支援してきた、数少ない「非自民」の大物財界人です。それゆえ、日航と自民党との間に距離ができたのも事実。昨年12月の総選挙で自民党が政権に復帰したことで、「非自民企業」のレッテルを張られた日航は、上場の際に地域経済活性化支援機構(旧企業再生支援機構、東京都千代田区)を通じて国庫に利益をもたらしたにもかかわらず、逆に虐げられる立場になってしまったのです。

「当社(日航)は国際線を運航する2社への均等な配分こそが利用者利便と国益の最大化につながると考え均等な配分を要望しておりました」

日航、ANA共に、最大のハブである東京発着路線の充実がなければ成長はあり得ません。特に日航は、破綻の前後に成田発着の国際線も含め、かなりの数の路線を廃止しなければなりませんでした。再建成った日航が再び攻めに転じるには、東京路線を少しでも多く取ることが必要ですが、昨年11月に提示された羽田国内線の増便枠ではJALが3枠に対し、ANAは8枠。エアドゥ(HD=ADO、札幌市)とソラシドエア(LQ=SNA、宮崎市)も含めればANAグループ全体で13枠と圧倒的な傾斜配分を喰らってしまいました。

公的資金も含めた財務基盤の強化で安定した利益を上げられる体質になったとはいえ、目先の利益額だけを体力として見るのではなく、就航都市数や便数など、収益を上げる大前提となる企業としての実力をしっかりと評価してほしいというのが、JALの言い分です。

「本邦航空会社に配分される16枠のうち当社に5枠、他社(ANA)に11枠と均等から大きく乖離した不公正な内容」

日航は、両社均等の8枠ずつを獲得できると考え、それに向けた社内での新路線検討を行っていました。しかし、結果は5枠。それも、タイやシンガポールといった既に羽田からの深夜便が飛んでいるディスティネーションは獲得したものの、他のASEAN諸国への追加枠は一つも取れませんでした。これについて、日航はプレスリリースで次のように続けました。

「民間企業の自由な活動である新規路線開設を制限するという新たな基準を設けるものであり到底承服できるものではなく誠に遺憾です

昨年8月に国土交通省から出された『日本航空への企業再生への対応について』という文書では、

「『JALグループ中期経営計画(2012年度~2016年度)』の期間中定期的又は必要に応じ日本航空に対し投資・路線計画について報告を求めその状況を監視する」

という行があります。この基準に沿って、消極的に判断したのではないかと取れますが、文書が作られた当時は民主党出身の野田佳彦首相の時代。それにもかかわらず、このような文書ができ、今回の決定に至ったのは、明らかにANAによる自民党へのロビー活動が、民主党を通じたJALのそれを上回ったことの現れです。

「なぜ民間企業の自由な活動を制限するような新たな基準を唐突に設定したのか、またなぜ新規路線開設が適切な競争環境を阻害するあるいは歪めることになるのかについての具体的な説明は示されておりません」

東南アジア路線に限って見れば、日航破綻後にANAが参戦した都市の多くは、以前JALだけが飛んでいたディスティネーションです。ヤンゴンに至っては、ANAだけが就航経験を持つ都市です。現在、JALだけが就航している都市はクアラルンプールとハノイに絞られました。中国でも、ANAの就航都市が9(香港除く)に対し、日航は5。そのうち1つ(天津)は現地に工場を持つトヨタ自動車(愛知県豊田市、東証1部上場)の出張需要を見込んで中部セントレア発としており、成田からの便はありません。

中国東方航空(MU=CES)や中国南方航空(CZ=CSN)、キャセイパシフィック(CX=CPA)といったコードシェアパートナーの販売網を生かして何とかネットワークを維持しているものの、自社便運航に限れば圧倒的にANA有利の体制ができてしまいました。日航は、破綻処理を理由にANAに有利な新基準を作ることが適切な競争環境なのかと批判しているのです。言い方を変えれば、ANAと自民党がグルになった党利党略の一環だと取られても仕方ありません。

「今後当社としましては合理的な説明と内容の是正を国土交通省に正式に求めていきます」

しかし、来年の夏スケジュールから運航を開始するには、今月中にIATA(国際航空運送協会)に下準備を申請しないといけないため、もし修正されるにしても来年の冬スケジュール以降。また、枠組みがまだ決まっていない対アメリカ線を両社公平、あるいは逆に日航への傾斜配分にすることができれば、日航が納得できる可能性は残っています。