2014年10月10日金曜日

アジキン今月で廃刊!12年の歴史に幕

マイウェイ出版(東京都千代田区)は、2002年から発行してきた海外性風俗専門雑誌『アジアン王』(アジアンキングと読む。以下アジキンと略します)を、今日10日発売の11月号限りで休刊(事実上の廃刊)とします。日本の出版社が発行するこの手の雑誌としては事実上唯一の存在でしたが、12年間、123号の歴史に終止符を打ちます。

アジキンが創刊する前の2000年代前半には、日本国内の裏風俗にスポットを当てた同種の雑誌がコンビニなどで販売されていました(ミリオン出版『俺の旅』、こちらは現在も存続)。アジキンを担当した編集プロダクション『ジップスファクトリー』(東京都千代田区)は当時、海外風俗を紹介する雑誌がなかったことに目をつけ、北東・東南アジア諸国の性風俗紹介に特化した雑誌を企画しました。当初は隔月刊で、後に月刊化(毎月11日発売)。編集長のペンネームも『俺の旅』の「さわやか澤出(さわで)」に対抗して、「ブルーレット奥岳(おくだけ)」とするなど明らかに意識しあっていました。

その後、雑誌だけでなくベスト版的なムック本『エクスタシーシリーズ』や単行本『夜遊びMAX』(こちらは別会社のオークラ出版が発行)といった多メディア展開、さらにはスタッフが読者と共に東南アジアを訪れて現地の風俗店を体験する『奥岳ツアー』を行うなど、ASEAN諸国へ旅行する日本人男性の間では知られた存在となりました。

しかし、この手の雑誌を手掛けることは、取材対象国の政治や公安といったリスクとの戦いでもありました。創刊5年目の2006年にタイでタクシン政権打倒クーデターが起こると、そこからは政情不安や災害の連続でした。スワンナプームショック、UDD軍戦乱、そして2011年の洪水。アジキン編集部はその度に他国へと取材の幅を広げて乗り切ったものの、そこでも数々の目に遭います。

中国の空港で旅行者が持ち込んだアジキン本誌を没収されるケースが続出。一部都市ではアジキンの記事がきっかけで大々的な風俗店の取り締まりが行われたと噂されたりしました。カンボジアやミャンマーでは性風俗全体の相場価格が極端に上昇して魅力を失いました。一方、モンゴルやフィリピンでは編集スタッフがやりたい放題やって顰蹙を買い、以後奥岳ツアーを組めなくなったとも言われています。当の日本でも、各都道府県から有害図書指定を連発され、販売に支障が出る始末でした。

2014年に入ると、タイではバンコクシャットダウン、中国でも広東省東莞市の風俗店一斉摘発と逆風が吹きまくります。5.22クーデターでタイがプラユット軍政当局に代わると外国人への風当たりが非常に強くなり、アジキン読者に代表されるセックスツーリストは現在、徐々にタイを離れつつあります。そこへ日本銀行総裁・黒田東彦による円安誘導政策が追い撃ちをかけました。日本人の海外旅行よりも外国人の訪日による国内消費促進に観光経済の主軸が傾き、少なくとも6年後の東京オリンピックまでは元に戻らない、つまり海外旅行需要の低迷は当分続く。ましてやセックスツーリストにはこれからどんどん厳しい情勢になっていき、最早潮時ではないかと、マイウェイ、ジップス両社は判断した模様です。

なお紙の雑誌の廃刊に伴い、公式HP『アジアン王Web』も10月31日(金)限りで閉鎖、全てのコンテンツが削除されると発表されています。