2015年5月1日金曜日

「日韓共同きっぷ」27年の歴史に幕

JR西日本福岡支社(福岡市博多区、東証1部上場)と韓国鉄道公社(KORAIL、大田市)は、1988年(昭和63年)から発売されてきた国際連絡型特別企画乗車券『日韓共同きっぷ』(韓国側名称『韓日共同乗車券』)の販売を6月30日(火)限りで完全終了すると発表しました。同種のきっぷを発売している他のJR3社(東海、四国、九州)での発売も同日限りで一斉に取りやめます。

日韓共同きっぷは元々、ソウルオリンピックの開催に伴う在日コリアンの流動を当て込んで、JR西日本が中心となって企画されました。当初は下関駅(山口県下関市)までのJR線と関釜フェリーの2等雑魚寝、韓国内は釜山~ソウル間のセマウル号利用というルートで、1991年(平成3年)にJR九州(福岡市博多区)が高速船『ビートル2世』の運航を始めると、博多駅乗り換えで釜山までビートル利用という日韓共同きっぷが追加されました。2004年(平成16年)には、高速鉄道KTXの暫定開業に伴い釜山~ソウル間KTX利用のバージョンが追加、2006年にJR東日本(東京都渋谷区、東証1部上場)が販売を終了して、東京地区からは東京駅のJR東海所管の窓口で買えるだけとなりました。

しかし、日本側では新幹線の指定席が使えるとされていながら、山陽新幹線の主力である速達型列車のぞみ号は利用できず、ひかりレールスター・こだま号だけという条件が玉に傷となり、販売は伸び悩みます。飛行機との速度差も決定的。新幹線とビートル、KTXを組み合わせても、新大阪~ソウル駅間の片道に丸々1日を要しては、ビジネス移動には適しません。

飛行機の便数も比べ物にならないくらいに増えました。成田~仁川は6社で毎日13往復、羽田~金浦も4社で毎日12往復。関空~仁川は7社で15往復と百花繚乱状態です。大韓航空(KE=KAL)や日本航空(JL=JAL)のエコノミークラス普通運賃と比べるならまだしも、Peach(MM=APJ、大阪府泉佐野市)やイースター航空(ZE=ESR)といったLCC(格安航空会社)が出てきた2010年代以降、韓国内での途中下車ができたとはいえ基本的にはソウルと日本の主要都市を単純に移動するだけの日韓共同きっぷは完全に競争力を失いました。

政治的にも、2012年の李明博(イミョンバク)前大統領による竹島(韓国名独島)訪問、2013年以降の朴槿恵(パククネ)現大統領の対日強硬路線で二国間交流が冷え込む傾向にあるのが影響するようになっています。

そこでJR西日本は、これまでソウル~日本国内間の片道または単純往復という形式だった日韓共同きっぷの発売形態を見直し、相手国内の鉄道を自由自在に乗れるフリーパス形式の往復券とすることにしました。日本側からはKORAILの『KOREA RAIL PASS』、韓国側からはJR西日本の『JR-WEST RAIL PASS』をベースにし、これにビートルと出発国内の鉄道を組み合わせたものとします。つまり、鉄道で両国内を旅しようとする滞在型の観光客を狙っていくモデルに転換するということです。同種の商品は、JR九州高速船(福岡市)が2006年から『コリアレール&ビートルパス』という名前で販売しており、これに日本発なら博多までの鉄道利用を追加することで容易に開発できた訳です。

免税品狙いで日帰りや1泊2日などの超短期滞在をする旅行者は、JR九州高速船が出しているビートルの割引商品を利用してもらえば良いし、単純移動だけならLCCでサクッと飛んでもらって、コリアレールパスの1日券や『JR-WEST 関西ワイドエリアパス』を組み合わせればOK。韓国発で目的地が関東方面であれば、JR東日本がJR関東エリアパスを用意しています。代替の交通手段や関連商品も充実し、日韓共同きっぷはその役割を終えたと判断されたのです。