2016年3月20日日曜日

AIS「創業以来」のプラチナバンドを失う

タイ携帯電話1位のアドバンスインフォサービス(AIS パヤタイ区、SET上場)は、1996年のサービス開始以来使ってきた2G(GSM)・3G(W-CDMA)900MHz帯の電波を4月16日(土)24時で停波します。4Gへの電波移行にあたって通信放送政策委員会(NBTC、パヤタイ区)による入札が行われた結果、業界3位のトゥルーコーポレーション(true ホイクワン区、SET上場)とジャスミンインターナショナル(JAS ノンタブリ県パークレット郡、SET上場)に敗れて使用権を失ったためです。

AISはサービス開始当時、NBTCの前身である通信政策委員会(NTC)から900MHz帯の電波を20年間独占的に使える権利を得ていました。そして、3Gのテスト運用が始まった後は、2.1GHz帯(W-CDMAバンド1)の入札が行われるまでの間、900MHz帯で3Gの電波を出す(W-CDMAバンド8)などして諸外国から10年近く遅れたタイの3G普及に貢献してきました(前記事「AISの3Gは周波数の違いに注意」参照)
この権利が2015年11月で切れたため、NBTCではAISに900MHz帯を一旦返納させ、4G(LTEバンド8)の周波数として入札で使用事業者を決めることにしました。入札は、業界2位のトータルアクセスコミュニケーションズ(dtac パトゥムワン区、SET上場)とインターネットプロバイダの『3BB』を運営するジャスミンも参加して大激戦となり、trueとジャスミンが落札者に決定。AISは、20年間使ってきた900MHz帯を使い続けられなくなり、先に落札していた1.8GHz帯(LTEバンド3)で4Gの本格サービス(『AIS4G』)を行うことになりました。AISでは、当初は昨年12月21日で停波、2G終了と発表していたものの2度にわたり延期されており、4月16日の停波はいよいよ待ったが許されません。

現在も市場で販売されている2G専用の携帯電話機は、900MHz帯、1.8GHz帯の2バンドか、1.9GHz帯を加えて3バンドに対応したものがほとんどで、AISでは1.8GHz帯の2Gサービスを存続するdtacとの間でローミング契約を交わしたため、ほとんどのユーザーは当分の間は2GケータイでAISを利用し続けることができます。NTT docomo(東京都千代田区、東証1部上場)の『WORLDWING』やau by KDDI(東京都千代田区、東証1部上場)の『グローバルパスポートGSM』といった2Gベースの国際ローミングも、dtac経由で引き続き利用できます。

ただし、3G最初期の2011年頃に販売されたAIS専用の3Gケータイなど、900MHz帯にしか対応していない機種を使い続けているごく一部のユーザーは4月16日以降、AISのサービスを使えなくなる可能性があるとして、バンコク首都圏以外の地方を中心に2GHz帯対応3G機の無償配布を行うなどの激変緩和措置が用意されています。

《3月30日追加》
NBTCは、JASが権利落札金の支払い保証を期限までに提出できず、失格になったと発表しました。早ければ6月にも再入札が行われる予定で、AISは900MHz帯を取り戻せる可能性が出てきました。

《6月12日追加》
NBTCは5月27日、4G900MHz帯の再入札を行いました。AISグループだけが応札し、落札者に決定。これにより、AISは900MHz帯を使い続けることが可能になりました。ただし、2Gの電波は6月30日(木)24時で停波することにしています。