2016年3月2日水曜日

「最後の冷気茶室」過去帳の彼方へ…

バンコクの旧市街地区で1980年代に人気となった性風俗の一種、「冷気茶室」。その面影を21世紀の現代に伝えてきた最後の茶室が、ひっそりと姿を消しました。

ヤワラー通りのニューエンパイアホテル2階にあった、『新三羊新興冷気茶室』(サームパンタウォン区)。40年以上の歴史を刻んできましたが、2月末までに営業を終了した模様です。

冷気茶室というのは、中華文化圏でよく見かける風俗の業態で、エアコンの効いた個室で中国茶やドリンクを飲みながら、傍に付いてくれた女性と事に及ぶというスタイルです。バンコクでは1980年代までが全盛で、新興冷気茶室のあったヤワラーにも、複数の同業他店が存在。サービスをする女性は未成年も多かったといい、その手の好事家にとっては天国とも言える状況でした。

しかし、チャチャイ・チュンハワン首相時代の1990年頃から外圧を受けるなどして摘発が相次ぐようになり、多くの冷気茶室は閉鎖。残ったところも在籍する女性がどんどん高齢化していき、一部では「年増園」などというレッテルを貼られる始末になってしまいます。若い女性は、営業時間や休日が決められた冷気茶室での管理された仕事を嫌って、自分の立ちたいときにいつでもできてしかも売り上げが全額自分のものになる立ちんぼへと業態を変えていったのです。

一方で、2004年のMRT開業とその後の延長構想を見越した再開発で旧市街の不動産市況も変化し、これが比較的遅くまで残った冷気茶室にとどめを刺します。MRTブルーラインワットマンコン駅予定地(ポンプラップ区)の近くには2軒の同業他店が残っていましたが、どちらも2007年までに廃業。そのうち1軒は入っていたビルが建て替えられました。古くからの冷気茶室という形態で残るのは、新興冷気茶室が最後となりました。新興冷気茶室は、1軒で1つの株式会社という態勢を取っていたために取締りを逃れることができたのです。

ですが、喫茶店や休憩所として茶室を使うタイ人はほとんどいなくなり、プラユット・チャンオチャ政権下での厳しい取り締まりもあって会社としての存続が立ち行かなくなった模様。董事長のFacebookに写真を掲載したところ、「2015年11月の時点で既に営業していなかった」とのコメントがあり、実際にはかなり前に廃業していた可能性もあります。