2016年7月3日日曜日

スルっとKANSAI終了へ!後継は「交通系最強」のICOCAだ

近畿圏の民鉄・公営交通各社局で構成する『スルっとKANSAI協議会』と、その事業会社『(株)スルっとKANSAI』(大阪市中央区)は、1996年(平成8年)から続けてきた磁気式ストアードフェアカード『スルっとKANSAI』のシステムを終息させる方向性を打ち出しました。

スルっとKANSAIは、阪急電鉄(大阪市北区、日本民営鉄道協会加盟)が1990年代前半から取り組んできたストアードフェアカードシステム『ラガールスルー』をベースに、1996年3月に正式導入されました。当初は阪急電鉄と阪神電鉄(大阪市北区、民鉄協加盟)を中心に、大阪市営地下鉄を含めた合計5社局でスタートし、近畿日本鉄道(大阪市天王寺区、民鉄協加盟)がサービスを開始した2001年(平成13年)までにネットワークの大枠が完成しました。近鉄では、沿線からの乗り換え需要が非常に多いJR西日本(大阪市北区、東証1部上場)への直通が可能な『Jスルーカード』も併せて発売されました。

その後、2004年にはスルKANの後継となり得るICカード『PiTaPa』が発表されます。しかし、PiTaPaはクレジットカードをベースにした1ヶ月分後払い(ポストペイド)方式を採用したため、クレジットカードの審査を通り得る社会人のみに対象が事実上限られ、他地域・他国のように誰でも入手という訳にはいきませんでした。後には、プリペイドベースのストアードフェア決済を採用した他の交通系ICカードとの間で共通化への大きな障害を生む結果になっていきます。

2006年、PiTaPaとJR西日本の『ICOCA』が相互利用を始めるにあたっては、ポストペイドとプリペイドの利用枠を分けた上で、プリペイドされた金額に限ってJRでの利用ができるとされました。2009年3月、Jスルーカードの販売が終了するに当たっては、近鉄鶴橋駅(大阪市西成区)と柏原駅(大阪府柏原市)の連絡改札に限ってICOCAで通過できるという暫定的な改善策が打ち出されます。

PiTaPaを利用できない高校生以下の児童・生徒は、スルKAN磁気カードか、ICOCAを利用するしか方法がありませんでした。特に子供運賃適用の小学生には、関東の同種のシステム、パスネットにはなかった『スルKAN小人用カード』『こどもICOCA』があり、これがスルKANのシステムを20年近くも存続させる大きな理由になっていました。

電子マネーも、PiTaPaはポストペイドが原則となっているのに対し、ICOCAはプリペイド。全国相互利用サービスによって、電子マネー部分も日本全国で使えるICOCAのほうが圧倒的に有利なのは自明で、むしろPiTaPaの方が特殊な立場に追い込まれていきました(前記事「最も使える交通系ICカードはICOCAだ」参照)

そして、JR西日本とスルKAN協議会加盟各社局(阪急阪神東宝グループを除く)の業務提携により民鉄各社でも『こどもICOCA』を含めたICOCAの販売が本格化することになったため、スルKAN磁気カードは21年間に及んだ歴史の幕を閉じることになりました。

スルKAN磁気カードの販売は2017年3月31日までとなり、自動改札機・自動券売機での利用も2018年1月31日限りで終了することになりました。ただし、ラガールカード(阪急電鉄)、パストラルカード(能勢電鉄:兵庫県川西市)、らくやんカード(阪神電鉄)、レジオンカード(北大阪急行電鉄:大阪府豊中市)は阪急阪神東宝グループ内に限り、18年2月以降も全機能使用できる予定です(後述)。