2017年2月24日金曜日

「空飛ぶ電車」が夜行バスに引導!

西日本鉄道(福岡市中央区、東証1部上場)と阪急観光バス(大阪府豊中市)は、大阪と福岡を結ぶ夜行高速バス『ムーンライト号』を、3月31日(金)の運行を最後に廃止すると発表しました。Peach(MM=APJ、大阪府田尻町)に代表されるLCC(格安航空会社)や新高速乗合(高速ツアーバス)に押され、33年の歴史に終止符を打ちます。

1980年(昭和55年)の国鉄ダイヤ改正で、近畿圏と九州を結んでいた夜行急行『阿蘇』『くにさき』が廃止されました。当時は寝台特急『明星』『彗星』『あかつき』があったものの、日本航空(JL=JAL)とANA(NH)の伊丹~福岡線も含めてかなり運賃が高く、中国自動車道も一部未開通区間があって、大阪~福岡間で旅行者がまともに使えそうな格安交通手段はフェリーしかない状況に陥りました。そこで、1983年(昭和58年)の中国道全通を受けて、西鉄と阪急バス(大阪府豊中市)の共同企画で運行が始められました。

大阪と福岡という大都市の中心部を結び、国鉄よりも安い料金で良いサービスを提供しようという狙いは当たり、1986年(昭和61年)には業界初となる独立3列シート29人乗りの専用車を投入。後に西鉄高速バスのフラッグシップとなる東京線『はかた号』で導入される高品質なサービスのほとんどは、ムーンライト号で培われました。最盛期には福岡へ直行する便と小倉(福岡県北九州市)にも立ち寄る便の毎日2往復が運転され、満席になれば増車することも日常茶飯事でした。

しかし、1997年(平成9年)の航空運賃規制緩和で日本航空が『前売り』(現在の『先得』)『特便割引』、ANAは『早割』『特割』などを発売、JMBやAMCといったマイレージプログラムも導入して運賃相場が下がります。阪九フェリー(北九州市門司区)と名門大洋フェリー(大阪市北区)の長距離フェリー2社も船1隻にバス20台分という圧倒的な旅客収容力と個室を増やした船内、そしてスタンダード(2等雑魚寝)でも完全水平で寝られる快適性を武器に巻き返しにかかります。2000年代に入ると、サービス品質では劣るもののムーンライト号の半額程度の運賃とした高速ツアーバスが運行されるようになり、ムーンライト号が多くを担ってきた長距離バス市場も手法を選ばぬ戦国時代に突入。ムーンライト号は赤字体質から抜けられなくなってしまいます。

そして、2012年3月。『空飛ぶ電車』Peachが最初の就航路線に選んだのが、関空~福岡線でした。Peachは通常期3,890円の最安値で勝負に出て、同じ年の8月に関空~福岡線の運航を始めたジェットスタージャパン(GK=JJP、千葉県成田市)も最安4,790円。両都市間を1時間15分で結ぶ高速性と夜行バスの半額以下の運賃を両立されては一溜まりもありません。
新高速乗合各社も質を上げてきており、ムーンライト号は曜日ごとに金額が異なるカレンダー制運賃やネット予約を前提とした『WEB早割』などを導入したものの、西鉄では

「これまで様々な施策を講じてきたがこれ以上の継続は困難と判断した」

とプレスリリースで説明、Peachが5周年の節目を迎えるこの時期に撤退する方針を決めました。Peachの登場が決定打となり、というよりはPeachに引導を渡された形という訳です。