2017年2月15日水曜日

白昼堂々!KLIA2で金正男氏暗殺!!

北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の3代目最高指導者、金正恩(キムジョンウン)委員長の異母長兄に当たる金正男(キムジョンナム)氏が13日朝、訪問先のクアラルンプール・KLIA空港で突然倒れ、現地の病院に運ばれたものの死亡が確認されたと、韓国の報道機関が一斉に伝えました。享年46歳でした。倒れる直前に工作員(スパイ)とみられる女性と接触したとの情報もあり、北朝鮮本国の指令による暗殺の可能性も取り沙汰されています。

国営ベルナマ通信(電子版)が現地警察トップによる記者会見を引用して伝えたところによると、正男さんと見られる男性は13日のAirAsia(AK=AXM)8320便マカオ行きに乗るため、AirAsia専用の第2ターミナル(KLIA2)でチェックインを完了、出国審査場手前の一般エリアで過ごしていたところ係員に体調不良を訴え出たといいます。男性は直ちに行政上の首都であるプトラジャヤ市内の病院に送られたものの死亡が確認されたとのことです。

その際、「KIM CHOL(キムチョル、漢字では金哲と書くのではないかと推測)」名義の北朝鮮パスポートを持っていたとのことで、韓国の消息筋は正男さんが過去にこの名義のパスポートで何回も出入国した経験があると指摘、マレーシアの英語紙も「死亡した男性の風貌が海外で出回っていた正男さんの写真に瓜二つ」と伝え、死亡したのは正男さんだと結論付けました。

正男さんは体調不良を訴える際に

「顔に液体のようなものをかけられた」

と述べたと日本の朝日新聞が伝えていますが、韓国の聯合ニュース通信は

「身元不明の女性2人に毒針で殺害されたとされる」

と伝え、一方でベルナマ通信は

「顔に化学物質を含んだ布をかぶせられた」

と書いており、正男さんが致命的不良を訴えるまでの過程はわかっていません。このため、マレーシア警察当局は近く司法解剖を行って詳しい死因を分析するとしています。

正男さんは、北朝鮮の2代目最高指導者だった金正日(キムジョンイル)総書記と、人民俳優(女優)だった成蕙琳(ソンヘリム)さんの間に生まれました。パスポートには1970年(主体59年)6月10日生まれとのデータがあったとしていますが、日本語Wikipediaでは1971年(主体60年)5月10日生まれとあり、どちらが正しいのかはわかっていません。

Wikipediaによると、正男さんは平壌にある金日成総合大学を卒業後、朝鮮労働党中央委員会作戦部で電子戦組織(通称『サイバー軍』)の確立に貢献、総書記の後継者争いに名乗りを上げたと伝えられます。

しかし、2001年(平成13年)5月1日、シンガポール・チャンギ空港から日本航空(JL=JAL)710便で成田国際空港(千葉県成田市)に到着した際、第2ターミナルの入国審査場で係官に偽造パスポートを見破られ、逮捕されてしまいます。正男さんは東日本入国管理センター(茨城県牛久市)で2日間過ごした後、退去強制となり中国へ向かいましたが、この一件で総書記の心象を一気に悪化させ後継者争いから脱落。本人もそれ以後は

「北朝鮮の内政には関心がないしもし(指導者に)させられたとしても絶対にやらない」

と漏らすようになり、生活の拠点を北朝鮮国外へと移していきました。

そのうち、自分より14歳も下の末弟である正恩氏が後継としての地位を固めると

「父(正日総書記)しか決められない。逆に言えば父の決定だから仕方ないし従うほかないが三代世襲は個人的には反対だ」(2010年10月12日のABC・テレビ朝日系『報道STATION』で放送されたインタビューより)

と述べて、逆上した正恩氏から何度も暗殺を仕掛けられたといわれました。

そして、今回の事件に至る訳ですが、マレーシアは北朝鮮国籍者がビザなしで1カ月間在留できる数少ない国の一つ。正恩氏率いる北朝鮮当局が正男氏暗殺を実現するならマレーシアだとばかりに工作員を送り込んだとしか考えられません。シンガポールは昨年10月から北朝鮮国籍者はビザが必要になっており(前記事「シンガポール、北朝鮮国籍者にビザを要求へ」参照)、選択肢が絞り込まれた矢先の出来事だったといえます。

多くの人が行き交う空港での白昼堂々の出来事だったにもかかわらず、正男氏以外に死者がいなかったのもしっかりと訓練されていた工作員の犯行であることを伺わせます。検死に立ち会った在クアラルンプール韓国大使館の職員は

「北朝鮮がこの手のテロでよくやる典型的な毒殺だ。毒物はVXガスの可能性がある

と述べたと共同通信が報じています。VXガスは、日本でもオウム真理教事件で使われ1人が死亡したことで知られています。今回の正男氏暗殺も、オウム真理教事件で実際に死者が出た1994年12月の事件と実行方法がよく似ており、可能性は高いと見られます。