2008年1月6日日曜日

在タイ日本人長期囚、恩赦のめど立たず

 司法省は昨年12月5日に満80歳の誕生日を迎えられた国王陛下のご長寿を記念して、国内の刑務所に収容されている受刑者に順次、恩赦を与えています。釈放と減刑合わせて25,000人に上るため、すべての手続きが済むには時間を要するとのことです。

 バンコクの中国語紙「世界日報」によりますと、この恩赦で、ガムウォンワン中央刑務所(バンコク首都圏チャトチャック区)に16年に渡り収監されていた台湾国籍の男性が釈放されることになりました。男性は麻薬大量所持の容疑で懲役30年の判決を受け、収監されていましたが、'06年の国王陛下ご在位60周年記念恩赦で減刑。今回、2回連続の恩赦で釈放が決まりました。男性は'07年12月下旬に出所して移民庁監獄(サトーン区)へ移され、1月3日、台北行きチャイナエアライン(CI)機で帰国の途につきました。
 在バンコク台北経済文化弁事処(台湾代表部。サトーン区)は、彼に限らず、タイで服役中の台湾国籍者全員の1日でも早い出所と帰国を支援することを任務の一つに掲げて活動しています。司法省本省や矯正当局と常に連絡を取り合い、また旧正月や中秋節などの節目には、代表(特命全権大使に相当)が自らガムウォンワン中央刑務所とバンクワン終身刑務所(ノンタブリ市)を慰問しています。

 しかし、私たち日本人が頼りにすべき在バンコク日本大使館邦人保護部は、犯罪被害者やノンイミグラントBビザを持っている駐在員は保護しても、受刑者への支援は事実上放棄してしまっています。バンクワン終身刑務所だけで8人いる日本人長期囚は、家族や大使館スタッフの訪問がほとんどなく、支援者や面会者の差し入れも期待できない状況下で、日々空を見ながらいつ来るともわからない出所の日を、指折り数えて待つしかないのです。特に終身刑に服している3人は大変です。
 タイの刑法では、死刑相当を司法取引しても終身刑にしかなりません終身刑を恩赦されても、懲役40年がやっとです。終身刑から出所までたどり着くには最低3回、懲役30年からでも2回の恩赦が必要なのに、それに必要な在タイ本国公館の支援が得られないのでは、恩赦の候補者リストに上がるメドすら立ちません。
 大使館は「自己責任」の一言で片付けるつもりです。ましてや、昨年年末には週刊ワイズの連載FAQで「日本大使館は各個人の在留許可については一切援護しない。例えパスポートの新規申請中に在留許可期限が切れる場合でも、それを理由に発給期間(切り替えで通常3日)を繰り上げることは絶対にできない」と冷たい言葉を投げかけています。例え彼らの罪が消えないものであっても、異国の地での刑務所暮らしは人道に反しかねない。海外での懲役受刑なんて死刑に比べたら全然ちょろいもん、だったら援護なんかしなくてもいい、いつかは出所できるんだろって気持ちでいるんでしたら、さっさと改めていただきたいものです。