2008年9月4日木曜日

安田氏殺害、日本法で処理か

 「外こもりのススメ」著者の安田誠(本名:棚橋貴秀)さんが行方不明になり、他殺体で発見された事件(前記事「安田誠氏殺される」参照)で、朝日新聞が4日、「日本の法律に基づいて処理される可能性が高い」と報じました。


 首都圏警察が8月21日付で出した、浦上剛志、森宏年両容疑者への逮捕状(前記事「安田氏殺害、邦人が関与?」参照)は、国際刑事警察機構(ICPO)を通じて警察庁に転送されてきていますが、日本国内ではこの逮捕状に基づいて逮捕することができないとのことです。このため、日本での捜査を担当している岐阜県警察刑事部捜査1課は、刑法3条の6(日本国民同士の殺人事件については現場が日本国外であっても日本の法律を適用できる)を適用して、殺人罪の国外犯扱いで逮捕できないか検討しています。
 3日には、(日本)警察庁本庁と岐阜県警察の捜査員7人が日本航空737便でスワンナプン空港に到着しており、警察病院(バンコク首都圏パトゥムワン区)に安置された安田さんの遺体を司法解剖にかけるため日本へ持ち帰るとのことです。

 インターポールに転送されているはずの逮捕状が、日本国内で行使できないとは驚きなのですが、警察庁はICPOが正式な国際手配書を出していないとの解釈を取っています。即ち、バンコク首都圏警察が出した逮捕状はタイ国内でのみ有効のため、岐阜県警察が現在任意で事情を聞いている状態の浦上・森両容疑者を、タイに再入国させなければ行使できません。事件の性格が性格(日本人同士による事件)で、しかも安田さんが預けた資産が引き出されたのは日本国内のATMであることから、日本での罪名成立が逮捕に向け、最も手っ取り早いと判断した模様です。

 もし日本で罪名が成立するならば、「殺人」ではなく「強盗殺人」になる可能性が高くなります。Be1stカードをゆうちょ銀行のATMに通して引き出したのが「窃盗」にあたるとの解釈でしたが、その後の調べで証券会社に預けられていた株が売却され、さらに外国為替証拠金取引専門会社に預けた証拠金も引き出されるなど被害金額が1,000万円を超える恐れがあるとのこと。そうなれば完全な強盗殺人です。
 タイの法律で裁けば、外国人が被害者の殺人事件は大概死刑相当ですが、司法取引の末終身懲役刑になります。もし日本法で裁くとなると、強盗殺人は事実上死刑か無期懲役のどちらかに限られており、被害金額1,000万円超えという今回のような事例であれば初犯でいきなり死刑判決を受けることも過去の判例から十分予想できます。

 岐阜県警察による捜査の行方に注目したいところです。

(9月9日追加)
 岐阜県警察の捜査員が、安田さんの遺体共々日本航空738便で名古屋・セントレアに帰国しました。遺体は岐阜大学医学部付属病院(岐阜市)で司法解剖され、容疑が固まり次第、浦上・森両容疑者を正式に逮捕する方針です。