2009年3月28日土曜日

「死刑相当」の否認は許されない

 2007年12月にチョンブリ県パタヤ市で起きた日本人同士の殺人事件で、チョンブリ地方裁判所は27日、北海道出身で元暴力団員の池田研五(いけだけんご)被告(60歳)に対し、死刑の判決を下しました。タイの近代的司法制度で日本人が死刑判決を実際に受けるのは史上初めてとなります。


 起訴状によりますと、池田被告はパタヤに住もうとしていた数年来の知人、中園浩さん(当時67歳、東京都出身)に近づき、中園さんがノンイミグラントO-Aビザの取得準備のために用意する予定だった現金350万円を奪い取ろうと画策しました。2007年12月14日、日本へ現金を取りに戻り、タイに帰国した中園さんをバンコク・スワンナプーム空港で出迎えた直後にパタヤ郊外の山林に連れ出し、首を絞めて殺害。証拠隠滅のため手足の先の部分を切断、遺体を放置した疑いがもたれています。
 池田被告は当初、他人名義のパスポートを使い、佐々木利彦(53歳)と名乗っていましたが、外務省領事局旅券課と警視庁組織犯罪対策部第2課の調べで名義人とされた人物は行方不明になっていることも発覚。このパスポートの発給をめぐって千葉県警察が私文書偽造の容疑で指名手配していました。

 タイでは、加害者と被害者の両方が外国人、または外国人が被害者となった殺人事件死刑相当とする判例が確立しています(前記事「安田氏殺害、日本法で処理か」参照)。死刑を司法取引することで終身懲役刑になりますが、池田被告の場合は終始一貫して否認していました。
 2008年11月には、麻薬密売目的所持を問われたイスラエル国籍の男が、やはり容疑を否認して死刑判決を受けた例もあり、今回の判決はある程度予想されていました。

 司法取引によって終身刑になった後、受刑者移送条約で日本の刑務所に移ることができる(前記事「バンクワンの受刑者に帰国の道が」参照)のですが、池田被告の場合、日本に帰国すると指名手配中の事件が時効にならず(刑事訴訟法255条)、飛行機が成田国際空港に着陸した直後に日本の法律で改めて逮捕されるので、タイで死刑判決を受け、処刑されてしまったほうが結果的に有利ということになります。
 ただ、タイでは麻薬以外の事件で判決を受けた死刑囚は、執行まで至らずに獄死するケースが圧倒的です。現在、バンクワン終身刑務所(ノンタブリ市)の死刑囚専用棟には1,000人近い死刑囚がいるといいます。死刑を恩赦されて終身刑になる例もあります。終身刑になれば、更なる恩赦を重ねて出所の可能性も出てきます(前記事「在タイ日本人長期囚、恩赦のめど立たず」参照)。もっとも、池田被告は容疑を否認していますので、恩赦の対象になるとはとても思えないのですが。
 万が一、池田被告が死刑相当になることを最初から承知の上で意図的に否認していたのであれば絶対に許すことはできませんそうであればTraveler's Supportasiaとしても、今回の死刑判決を断固、支持する論陣を張ります。池田被告は

「何が起きているのか理解できない。控訴する」

と述べましたが、控訴しても判決がひっくり返る理由などありません。