2009年4月30日木曜日

「帰国支援」の甘い罠にひっかかるな!

厚生労働省は、3月31日から「日系外国人離職者に対する帰国支援事業」を始めました。しかし、実態は事実上の永久再入国禁止が条件とも取れる内容。過去の教訓がまったく、生かされていません。

厚生労働省によりますと、事業は日本での就労継続を諦め、帰国を決断した日系2・3世の外国人労働者とその家族に対して、帰国費用と当面の生活費として30万円+家族1人につき20万円を支給するというもの。労働者本人が失業給付を受けていますと、残り日数に応じて最大20万円の追加が受けられます。

しかし、事業に応募して給付を受けると、「定住者(日系2・3世)」の在留資格で再び日本に来ることはできなくなります。「短期滞在」(いわゆる観光ビザ)の再取得は可能ですが、その期間について、東京新聞は4月26日朝刊社会面で厚労省職業安定局外国人雇用対策課の話として


「二度と入って来れないようにする訳ではない」

と書きました。ところが、翌27日付の東京新聞朝刊特報面では法務省入国管理局入国在留課にも話を聞き

「事業が終了した後に再検討することになる。その時期はいつになるか、何とも言いようがない

とも伝えました。事業がいつの時点で終了するかは現時点では読めません。もし打ち切られても、そこから一定の期間が経たないと再入国禁止の解除にすら応じてもらえないのでは景気回復後の再来日を考えていても無理な話。

下手すれば、在日韓国・朝鮮人を北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)に集団帰国させた「祖国帰還(韓国の言葉では「北送」)事業」と重ね合わせて考えることもできる、というか、厚労省は祖国帰還事業と同じ轍を踏むつもりだとも言えるのです。祖国帰還事業では、帰国船が出る新潟港に設けられた日赤センターに

「帰国船に乗って北鮮(当時の日本政府の北朝鮮に対する言い方)に渡るとお持ちの日本在留資格(特別永住)を失います。日本に戻って来れる保障は一切ありません。それでも乗るなら皆さんの自由です」

という内容が大書きされたにもかかわらず、それを見て帰国を取りやめた人はほとんどいなかったといいます。その結果北朝鮮に渡った元在日韓国人は約10万人。多数の脱北同胞の悲劇につながっているだけに…

今回の事業では、ハローワークに問い合わせた時点で再入国に支障が出ると伝えられ、応募を取りやめる日系ブラジル人が続出しています。事業の内容を正しく理解し、家族で100万円近いお金を一度に受け取れるからと安易に応募することのないよう、在日ブラジル人コミュニティや支援のNGOが呼びかけているとのことです。

日本とタイのハーフで、タイ国籍を選択して日本に来た方に対しても同様。2度と日本で働けなくなるリスクを犯してまで、目先の札束に目を眩ませるんですか?