2009年10月18日日曜日

日タイボクシングビジネスの問題点が次々と(2)

昨年11月、辰吉選手がKO勝ちした直後、安河内剛JBC事務局長は

「タイ(のボクシング界)との付き合い方を見直さないと」

と言い放ちました。しかし、実際は日本側にも、ビジネスとしての問題はいくつもあります。スポーツマンシップを優先するとプロフェッショナルビジネスが成り立たなくなるという声もありましたが、それを回避するための実質的なダブルスタンダードだというのも、また然りです。


《日本側:TBCの提出データを信用し過ぎ》

JBCも、 PBAT発足以前からのTBCとの長年の付き合いもあって、TBCから提出される推薦状の内容を信用し切っていたといえます。一応、前記事で取り上げたもの以外に「招請不可基準」というものもあります。次に挙げる基準のいずれか1つでも満たすと、その選手は日本に来れません。

1.過去12ヶ月以内に日本国内で3試合以上連敗
2.本来の階級が相手となる日本人選手と著しくかけ離れている
3.過去の戦績が相手となる日本人選手のそれに見合わない
4.コミッション当局発行の選手データ(戦績等)が不備もしくは信用性に劣る
5.前日計量で契約体重、または階級リミットを上回った
6.当日興行終了後の試合役員会で内容が著しく悪いと判定された

しかし、実際には1.と5.の2つしか、厳しく運用していないと言わざるを得ない状況です。

パランチャイ選手は、招請禁止ボクサーの制度がより厳格に運用されていたなら、2007年4月1日以降は招請禁止になっています。もしそうなっていたとしても、2007年3月31日までに招聘状が発行されてしまえば、招請禁止期間であっても試合に出ることはできたと解釈すれば、対橋本戦が4月という時期に行われたのも、理解できるものです。

《日本側:PBAT発行の書類をビザ審査に使わない》
JBCは、「在留資格が短期滞在(いわゆる観光ビザ)の外国人にはライセンスを交付しないとはっきり定めています(JBCルール3条)。ところが、実際には興行ビザの審査に時間がかかったり、試合が急に決まるなどして、やむなく短期滞在資格での日本入国に踏み切らせるプロモーターもいたといいます。

在バンコク日本大使館査証部は、タイ人に対する興行資格ビザ申請に最低限必要な書類として、次に挙げる物を求めています。

1.申請書
2.質問票
3.国民IDカードとそのコピー
4.タビアンバーン(住居登録証)とその全頁コピー
5.履歴書
6.在留資格認定証明書とそのコピー

このうち、在留資格認定証明書が最も大きな問題を抱えています。在留資格認定証明書は日本側の引受人が入国管理局に申請して発行を受け、現地に送らないといけません。入管は、引受人となる日本側プロモーターから提出される対戦契約書と、JBC発行の招聘状を参考に証明書を出します。

しかし査証部は、PBAT発行の書類を使って審査をすることはほとんどありません。ボクサーライセンスは提出させたとしても有効期限をまず見ないといいます。タイ人ボクサーが海外に出るときに必要とされるPBAT発行の海外遠征承認書も、在留資格認定証明書が出てきた時点でビザの審査には必要とされません。

査証部があえて見るとすれば、対戦契約書の英訳本と、TBCの推薦状、そしてJBC発行の招聘状。このためにPBATによる遠征承認の制度は、ほとんど機能していませんでした。実際、TBCの推薦状が出てきた時点で招聘状も在留資格認定証明書もほぼ取れ、それがタイに送られてくれば、興行資格の日本ビザは間違いなく下りていたのです。