2012年2月3日金曜日

インド系キャリアはアライアンスから嫌われる!?

キングフィッシャー航空(IT=KFR、インド・ムンバイ)は3日、2月10日付で認められる予定だった国際航空アライアンス「ワンワールド」への加盟が無期限延期になると発表しました。インドの航空大手ではエアインディア(AI=AIC)がスターアライアンス加盟を見送られたのに続く延期決定で、インドはもちろん、パキスタンやバングラデシュといった南アジア諸国のキャリアがアライアンス化の流れから取り残されるという、悪い傾向になりそうです。

キングフィッシャーは2005年の創業。わずか6年で国営フラッグキャリアのエアインディアやジェットエアウェイズ(9W=JAI)と肩を並べる規模に急成長し、バンコク・スワンナプーム空港にもデリー、ムンバイ、コルカタのインド3大都市から毎日乗り入れています。ところが、ワンワールド加盟の準備が本格化した昨年夏頃から財務状況が悪化。格安部門「キングフィッシャーレッド」を縮小し本格航空会社としての価値を高めようとしたところ、別の格安キャリアであるエアインディアエクスプレス(IX=AXB)やIndigo(6E=IGO)が攻勢をかけて激しい価格競争に巻き込まれました。本格航空会社に専念するということは、運航コストの上昇を招くことになり、キングフィッシャーはそのしわ寄せを従業員に押し付けるという悪循環に陥りました。

11月には給与の遅配を出し、それが原因で従業員の大量退社が起こります。運航人員が不足したためインド国内線の一部で欠航が発生、その際に証券取引所への適時開示をせずに「機材運用の再編」と嘘の説明をしました。一方で裏では整備に入る予定だったリース機材の契約更新が認められず強制返却、保有フリートが縮小するといった事態になっていました。

1月に入ると、IATA(国際航空運送協会)クリアリングセンターへの支払いも滞るようになったといいますが、この事実を会社側は「技術的な問題」とだけ説明。ワンワールド幹事社の一つでキングフィッシャーとコードシェアを組んでいるブリティッシュエアウェイズ(BA=BAW)の持株会社「インターナショナルエアラインズグループ」(IAG、イギリス・ロンドン)を激怒させる結果になります。IATAクリアリングセンターへの支払いが滞ってクリアリングが一部でも停止すると、航空会社にとって日本の銀行取引停止処分と同じ意味を持ちます。過去には経営破綻の原因になったこともあるだけに(前記事「遠東航空が全路線運航停止」参照)、ワンワールド側の対応は急速に冷ややかな方向へと変わっていきました。

折からアメリカン航空(AA=AAR)の持株会社「AMR」のチャプター11申請や、マレブハンガリー(MA=MAH)の運航停止などワンワールドを取り巻く状況は厳しさを増しており、このままキングフィッシャーを加盟させてもアライアンスとして支えきれないと判断。2月10日の加盟まであと1週間のところで加盟延期が決定、まさにドタキャンとなってしまいました。

昨年夏にはエアインディアが4年越しの準備を進めていたスターアライアンスから「保留」という形で加盟を見送られてしまい、今回のキングフィッシャーのドタキャンで、インド系キャリアとしてアライアンス加盟を目指した2社が共に加盟できないという事態になりました。ワンワールドではAAとIAGが

「財務上の問題が解決した後に加盟手続きをやり直す」

と発表。キングフィッシャーが再建を実現して、加盟交渉のテーブルに再びつけるようになるには、時間がかかるとみられます。

ビーマンバングラデシュ(BG=BBC)やパキスタン航空(PK=PIA)、ネパール航空(RA=RNA)といったインド周辺国のキャリアもアライアンス加盟にはまだまだ長い道のりを経る必要があり、南アジアの航空会社は軒並みアライアンス化の流れから取り残されそうです。