2012年12月3日月曜日

ANA成田~仁川線廃止、エアアジアに移管!?

ANA(NH)は2013年3月31日からの夏スケジュールで、成田~仁川線を運休(廃止)すると発表しました。会社側ではプレスリリースで「今後の事業環境および需給環境等に鑑み」とだけ説明していますが、その背景には同じANAグループのエアアジアジャパン(JW)が同路線を皮切りに国際線の運航を始めたことがあるようです。

《2013年3月30日の運航をもって取りやめ》
NH907 NRT1050~ICN1330 DAILY
NH908 ICN1425~NRT1640 DAILY

(機材はエアバス320 エコノミークラスのみ166席)

ANAは1989年(平成元年)に成田~ソウル線の運航を開始しました。当時は仁川空港がまだなく、金浦空港発着でした。その後仁川空港の開港と同時に金浦から仁川へ移動し、2007年10月からは両国のビジネス交流拡大政策に乗る形で羽田~金浦線を就航させました。

現在は、羽田~金浦線が毎日3便運航されているのに対し、成田~仁川線は毎日1便にとどまっています。これは成田空港の発着枠の関係でもあるのですが、2013年中に発着枠が拡大され、成田空港発着の日韓線は自由化されるにもかかわらず、なぜこのタイミングで廃止と言い出したのでしょうか?

ANAグループには、成田をハブとするLCCのエアアジアジャパンがあります。エアアジアジャパンは成田~仁川線を最初の自社国際路線に選び、10月28日から運航を開始しました。ビジネス客中心のフルサービスキャリアとLCCでは棲み分けられるはずですが、両国間を往復するビジネス客はより利便性の高い羽田~金浦線をP2P(ポイント・ツー・ポイント)で利用する形に移行したと判断しました。

そのエアアジアジャパンはもちろんのこと、韓国側からもイースター航空(ZE)などのLCCがオープンスカイ実施後の成田~仁川線で運航拡大のチャンスを狙っています。LCC側の増便が実現すればますます競争は激化し、ANAのような本格航空会社はよりプレミアム性を高めた運航政策を採る必要に迫られますが、エアバス320やB738クラスの小型機ではなかなかそうはいきません。しかも、エアバス320は現在の中期計画期間中にANAから全機退役することが予定されています。そうなると代替機材となるB763、788クラスでは輸送力過剰になってしまいます。

スターアライアンスのグローバルネットワークへの接続性という意味合いでも、ANA自社の成田~仁川便は存在意義が薄れていました。仁川を午後に出発するNH908便では成田を発着する北米線で同日乗り継ぎできる便が限られてしまいます。一方、成田~仁川線ではANA以外にも同じスターアライアンスに加盟するアシアナ航空(OZ)やユナイテッド航空(UA)がより大きな輸送力を持っており、両社ともコードシェア提携をしていることから、このまま自社運航を続けても非効率になるとの結論に至りました。

そこへ李明博大統領の竹島上陸に端を発する領土問題が起こり、日韓間の移動需要は一時落ち込みます。結果的にこれが決定打となって、成田~仁川線はエアアジアジャパンに任せることにし、ANA自社での運航を取りやめるという決断をした訳です。