2013年11月8日金曜日

MRTパープルラインの電車、日本から導入

JR東日本(正式社名:東日本旅客鉄道 東京都渋谷区、東証1部上場)の冨田哲郎社長は6日に行われた月例社長記者会見の席上、バンコク首都圏北部とノンタブリ県で現在建設中のMRTパープルラインに触れ、車両や保安システムなどをオールジャパンで一括輸出すると述べました。

MRTパープルラインは、ブルーラインのバンスー駅(バンスー区)から分かれ、クルンテープノンタブリ通り、ティワノン通り、ガムウォンワン通り、ラタナティベット通りを北西に向かって進む全長23kmの路線。首都圏北郊のベッドタウンとして人口が増えつつあるノンタブリ市、バンブアトン郡、バーンヤイ郡の交通事情を改善する「強力な武器」になるとみられています。2007年に国際協力銀行から円借款の供与を受けて建設が決定、2016年の開通に向けて建設が進められています。

パープルラインの建設は、MRTA(都市鉄道公団)による入札の結果、ゼネコン大手のチョーカンチャン(ディンデン区、SET上場)が主に担当。車両や保安システムもチョーカンチャンを経由して日本陣営に発注されることになりました。

保安システムは丸紅(東京都千代田区、東証1部上場)と東芝(東京都港区、東証1部上場)がコーディネータとなり、開業後10年間の保守契約とセットで納入。このため、丸紅、東芝、JR東日本にチョーカンチャンを加えた4社で合弁子会社を設立、この会社が運営母体となるバンコクメトロ(BMCL チャトチャック区、SET上場)と契約を交わします。

車両本体はJR東日本が昨年、東京急行電鉄(東京都渋谷区、東証1部上場)から買収した子会社の総合車両製作所(J-TREC、横浜市)で製造して輸出します。日本製の電車がタイの都市鉄道で導入される初めての事例であるとともに、次世代ステンレス電車『Sustina(サスティナ)』のアジア向け輸出第1号案件となります。MRTパープルラインで使用する第三軌条集電直流750Vという規格は、大阪市営地下鉄の20系シリーズや横浜市営地下鉄ブルーラインの3000N形で実績がありますが、今回はJR東日本のE233系や、東急電鉄の5000系などを参考にしながら、現地の事情に合わせた設計が行われます。

ちなみに総合車両は、旧東急車輛製造の時代に旧国鉄のキハ40系をベースにしたステンレス製ディーゼルカー(THN/NKF形)を鉄道庁(SRT)へ納入しており、タイ向け車両を新造するのは約30年ぶり。前回輸出されたTHN/NKF形はバンコク~ノンカイ間片道約600kmの長距離急行運用に就くなど、現在も第一線で活躍しており、日本の高い技術力を余すところなく証明しています。

MRTパープルラインの開業まで、あと2年強。日本から輸出されるSustinaには、末永くバンコク首都圏で活躍してもらいたいものです。