2015年2月23日月曜日

米担保融資の損失回収に本腰!?BAACが首都圏を攻める

農林農協省(MOAC、プラナコン区)は、歴代タクシン派政権が行ってきた地方へのバラマキ政策である「コメ担保融資」で巨額の損失を被りました。その損失を少しでも回収するべく、管下のBAAC銀行(農協金融公庫、チャトチャック区)がこれまで全く相手にしてこなかったバンコク首都圏中心部在住の中間層や富裕層からの顧客獲得に力を入れるようになりました。

2010年のUDD(赤シャツ)軍戦乱以前は、バンコク首都圏中心部にBAACの支店はほとんどありませんでした。あったのは、旧本店だったナンルン支店(ドゥシット区)、チャトチャック支店(オートーコー市場内=チャトチャック区)、モーチット2支店(北バスターミナル内=チャトチャック区)ぐらい。他はミンブリやノンチョックといった最東部、トンブリ側であればトゥンクルやバンボンといった郊外の区にしかなく、外国人にはまず縁のない金融機関でした。

(画像1:農協金融公庫ナンルン支店。2012年まではここが本店だった)

それが、インラック・チナワット前首相の任期後半になると一変、バンコク首都圏中心部で支店を拡大するようになります。2011年にオープンしたサイアムパラダイス支店(プラカノン区)を皮切りに、メトロナイン支店(MRTブルーラインラマ9世駅構内=ホイクワン区)、オデオンサークル支店(サームパンタウォン区)、ソイバイヨーク支店(ラチャテーウィ区)などが次々と開店しました。昨年2014年には、BTSスクンビット線エカマイ駅とプラカノン駅の間にスクンビット65支店(ワッタナ区)ができました。

(画像2:農協金融公庫サイアムパラダイス支店。ナイトバザール閉鎖後も残っている)

これら中心部の支店では普通・定期といった伝統的な預金を獲得するだけでなく、オムシン銀行(貯蓄金融公庫)と共に発行が許されているくじ付き預金も販売されており、農業と全く縁のない階層のタイ人にアピールしています。外国人に対しては、ウエスタンユニオンの海外送金サービスが発着共に提供されています。

インラック政権下の3年間だけで5,000億Bt.(1兆8,000億円)以上に達するという見積もりもあるコメ担保融資の損失を、内需拡大だけで回復するのは至難の業。コメ輸出もベトナムの台頭で厳しくなる中、BAAC銀行の新たな挑戦はまだまだ始まったばかりです。