2016年8月5日金曜日

V-Air存立危機か!?タイガーエア台湾も経営難の噂

台湾を拠点とする格安航空会社(LCC)のV Air(ZV=VAX、台北市)とタイガーエア台湾(IT=TTW、桃園市)が、就航から2年足らずで早くも経営危機に陥っていると報道されました。タイガーエア台湾は新規路線の開設を一部取りやめ、V Airは早ければ年内にも全便運航停止に追い込まれる可能性があると伝えられていて事態は深刻です。

台湾国営中央通信が4日、交通部(日本の国土交通省に相当)関係者の話として伝えたもの。それによりますと、V Airは定期便運航開始(2014年12月)以来の累積損失が10億台湾元(約30億円)に達しており、運航停止まで行かなくても保有機材の一部を親会社のトランスアジア航空(GE=TNA 台北市、台湾証取上場)に戻さなければいけないといいます。既に路線の縮小も始められていて、台北桃園~マニラ(ニノイアキノ)線をわずか3ヶ月で撤退したのに加え、4月から運航を始めたばかりの桃園~羽田・茨城両路線も遅くて10月末からの冬スケジュールで運休すると報じられました。

V Airはトランスアジア、タイガーエア台湾はチャイナエアライン(CI=CAL 桃園市、台湾証取上場)という既存の本格航空会社(FSC)が親会社になっていますが、何よりもブランド力の確立が遅れていること、そして日本路線での過当競争、FSCのドル箱である中国大陸への幹線に参入できないことが経営難の大きな原因ではないかとTraveler's Supportasiaでは分析します。

両社ともに運航開始当初から主力になると見込んだ日本路線が日台両国はもちろん、第三国キャリアまで入って、LCC、FSCの垣根関係なく過当競争を繰り広げています。

日台路線に参入しているLCCでは、Scoot(TZ=SCO)とジェットスターアジア(3K=JSA、両社ともシンガポール)が東アジアの南北を結ぶ中距離路線の経由地とし、台北からも双方向へ販売して採算性を確保する作戦に出ています。一方、日本がハブのバニラエア(JW=VNL、千葉県成田市)やPeach(MM=APJ、大阪府田尻町)は地道なブランド戦略で相手国への浸透を図る努力を重ね、ジェットスター・ジャパン(GK=JJP、千葉県成田市)は成田空港の発着時間制限を逆手に取った深夜便運航でビジネス客にもアピールしています。

これに対し、後発で知名度の低い台湾系LCCは台湾人こそ乗るものの、日本では馴染みが薄い存在。タイガーエア台湾は東南アジアで既に実績を積んだタイガーのブランドを使い、国際線LCCとしてのネットワーク性を訴えていますが、本体(TR=TGW、シンガポール)と違ってバリューアライアンスには未加盟で、せっかくのブランドを十分に生かし切れていません。しかし、チャイナエアラインの日本地区販売子会社『ダイナスティーホリデー』(東京都中央区)を通じたパッケージツアーの販売を行っており、今後販売を強化できる余地があるのが大きなポイントです。

V Airに至ってはPeachやバニラエアと違って海外でのブランド浸透がほとんどできないまま、羽田空港の深夜早朝発着枠に空きがあったから参入したという見切り発車的な要因もありました。実際、V Airの羽田線は日本発初便から採算ラインを大きく割り込む低搭乗率を記録し、国内総代理店が「厳しい発券条件で(日本発の団体客に)卸売りできない」と泣きを入れたといいます(前記事「台湾第2のLCC、V-Air関東初上陸」参照)

一方で、タイガーエア台湾は中国大陸への路線(両岸直行)を開設することができたものの、桃園~上海浦東・北京首都・広州白雲・香港といった大幹線には参入できていません。これら中台間の幹線は基本的にはチャイナエアラインや中国国際航空(CA=CCA)、中国南方航空(CZ=CSA)といったFSCが幅を利かせており、LCCは大陸側の春秋航空(9C=CQH)が桃園~上海浦東線に週4便運航しているだけと大きな差をつけられています。V Airは唯一の両岸路線だった桃園~マカオ線を就航7ヶ月で撤退してしまっています。

V Airも他の航空会社と同様に、当初数年間は赤字決算を見込んでいましたが、それが当初の見込みよりも大きくなった際に、トランスアジアが増資や損失補填といった支援に耐えられるかという点にも問題がありました。

トランスアジアはアライアンス(国際航空連合)に加盟しておらず、独力で資本調達しなければなりません。ジェットスター・ジャパンに対して大株主のカンタス航空(QF=QFA)や日本航空(JL=JAL 東京都品川区、東証1部上場)は合わせて100億円を超える増資を引き受けるなど支援していますが、同じことをトランスアジアができるかと言われれば、まず無理です。ましてやトランスアジア自体が最近2年間で2回の墜落事故を起こし安全性に問題ありとみなされています。

9月には、バニラエアが桃園~ホーチミンシティ線を新規就航させ台北と第三国を結ぶ国際線にも参入します。その陰で、V Airは毎日運航に増やしていた中部セントレア線を減便、タイガーエア台湾は認可申請中だった新千歳線の新規就航を撤回します。

《9月19日まで有効》
ZV202 TPE0605~NGO1005 DAILY
ZV203 NGO1105~TPE1345 DAILY

《9月29日のフライトをもって取りやめ》
ZV202 TPE0605~NGO1005 火・木・土・日曜運航
ZV203 NGO1105~TPE1345 火・木・土・日曜運航

(機材はエアバス321ceo エコノミークラスのみ194席)

(8月5日追加)
台北で発行されている『工商時報』(電子版)は、8月9日(火)に予定されているトランスアジア航空の董事会(取締役会)の席上、V Airを吸収合併するか否かについて議論されると伝えました。また、中央通信も続報で

「V Airのほうが経営状態は切迫しており廃業やトランスアジアへの吸収合併といった案が持ち上がっている(交通部担当者談)」

と伝えました。合併が実現すると、V Air便はトランスアジア本体の運航に変わり、独立会社としては幕を下ろすことになります。

(8月9日追加)
V Airは、9月30日(金)で自社での運航業務を終了することになりました。翌10月1日付でトランスアジア航空に吸収合併され、1年10ヶ月でLCCとしての歴史に終止符を打ちます。

桃園~羽田・茨城の両路線については、9月中旬で一足早く取りやめると発表しました。9月下旬以降のフライトを既に予約されている方は、トランスアジア航空の成田線に振り替えるか、払い戻しとなります。

《桃園発9月16日、羽田発9月17日のフライトをもって取りやめ》
ZV253 HND0300~TPE0600 火・木・土曜運航
ZV252 TPE2200~HND0200 月・水・金曜運航

《9月18日のフライトをもって取りやめ》
ZV240 TPE0700~IBR1110 火・木・土・日曜運航
ZV241 IBR1210~TPE1435 火・木・土・日曜運航

(機材はエアバス321 エコノミークラスのみ194席)

トランスアジアとV Airの両方が就航している桃園~関空・那覇線はトランスアジア便への振り替えで対応。チェンマイ線はトランスアジアが新規就航、福岡線は再開して引き継ぎます。中部セントレア・釜山金海線はGE便がないため廃止、予約者にはトランスアジアの責任で全額払い戻しします。バンコクは、トランスアジア(スワンナプーム)とV Air(ドンムアン)の発着空港が異なるため廃止扱いとし、振り替えせずに払い戻しとなります。