2017年11月4日土曜日

期間工を正社員に昇格させない裏技

日本の自動車メーカー各社は、正社員として雇用している従業員の他に、雇用期間を切った契約社員である『期間従業員』を使っています。70年代以前は農閑期に仕事がない農業従事者を中心とした季節労働者の受け皿として使われてきましたが、今は現場作業員を安く使うための『雇用の調整弁』へと変化してきました。そして、この調整弁機能を今後も存続させる抜け道を政府・自民党に作らせ、実際に利用しはじめようとしています。

朝日新聞は11月4日付朝刊の1面トップに

『車大手、期間従業員の無期雇用を回避 法改正骨抜きに』

という見出しを立てました。アルバイトや契約社員の長期雇用を推進するため、2013年(平成25年)に改正された労働契約法(2007=平成19年法律128号)に抜け道条項が存在し、改正内容が骨抜きにされると指摘しています。

期間従業員を含む契約社員は

「必要以上に短い期間を定めることによりその有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない」(労働契約法17条)

とされており、表向き、1年に満たない単位で契約を更新するなどということは困難になりました。董事長ふくちゃんは1990年代にヤマト運輸(東京都中央区)に契約社員(社内呼称『パート社員』)として勤務していたことがあり、当初1年単位で契約していたのが、6カ月単位に変更されたことがあります。またヤマト運輸が直接雇用する「正規アルバイト」は現在でも、暦月2ヶ月の契約期間を終えた後、1ヶ月空けなければ再契約することができない制度になっています。

自動車メーカー各社の期間従業員も同様で、例えばトヨタ自動車(愛知県豊田市、東証1部上場)や豊田自動織機(愛知県刈谷市、東証1部上場)では3カ月単位、SUBARU(旧富士重工業:東京都渋谷区、東証1部上場)は4カ月単位で契約を更新しますがいずれも連続して35ヶ月を超える就労はできません。農業従事者の出稼ぎなど、3ヶ月や6ヶ月などの単位で故郷に帰る人が減って、長く働くことを希望する人が増えたにもかかわらず、期間工はあくまでも期間工、以前からの制度は変わっていないのです。この期間を超えて就労を希望する場合は、正社員登用試験を受けて合格するか、次の雇用契約まで最低でも6カ月のブランクを置く必要があります。

労働契約法には『無期雇用申し込み権』が定められており、申し込みがなされた場合、雇用主はこれを拒否することができません。

「同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間(次項において「通算契約期間」という)が5年を超える労働者が当該使用者に対し現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす」(労働契約法18条の1)

しかし、前述した6ヶ月のブランクが、法の抜け道となっているのです。

「前の契約期間が満了した日とその次の有期労働契約の契約期間の初日との間にこれらの契約期間のいずれにも含まれない期間が6ヶ月以上あるときは当該空白期間前に満了した有期労働契約の契約期間は通算契約期間に算入しない」(労働契約法18条の2)

つまり、35ヶ月を満了した期間工であっても、6ヶ月のブランクがあれば通算5年勤務に達しても無期雇用転換を申し込むことができず、期間工として再契約しなければならなくなる、逆に会社側から見れば期間工として使い続けることができてしまうのです。SUBARUの募集専用Webサイトには

「フォークリフト運転は期間工の仕事。自分はこの仕事が好きだから正社員登用を申し込まず既に2回満期再契約している」

という先輩社員の声が掲載されていますが、言い方を換えればこれも、法令の抜け道を利用して期間工で長期間使い続けていることを会社自ら認めているようなものです。

一方で、ANA(NH、東京都港区)は客室乗務員に契約社員が多かったものの、13年の法改正直後に契約社員の新規採用を取りやめ、正社員へ一本化。日本航空(JL=JAL 東京都品川区、東証1部上場)は旧JALウェイズ(JO=JAZ)がバンコクベースのタイ人従業員を多数雇用していたこともあり調整が遅れたものの、2016年4月の時点で契約社員制度自体を廃止して全員正社員に切り替えました。日本マクドナルドホールディングス(東京都新宿区、東証1部上場)やエステティックTBC(正式社名:TBCグループ 東京都新宿区、東証1部上場)などは現在いる契約社員を全員無期雇用にする方針を打ち出していますが、これらも日本社会全体の対象者の数からみればまだまだ少数派です。

ヤマト運輸をはじめとする物流など労働集約型産業や、製造業では期間工ないし契約社員の活躍が多く、それらの雇用転換が実現しなければ海外に活躍の場を求める人も出てくるでしょう。このままでは、外こもり的な生き方をする人が出るのを止めることはできないだろうと、董事長ふくちゃんは考えます。