2009年10月21日水曜日

パナソニック駐在員家族「帰国拒否」の例外

前記事「パナソニック駐在員の家族、一斉帰国へ」から9ヶ月。期限とされた9月30日を過ぎ、帰国ラッシュはほぼ落ち着いたように見えます。しかし、一部例外に該当する家族は海外に残ったまま。これについて、会社側から説明がありました。

月刊グローバル経営10月号(一般社団法人日本在外企業協会)掲載の座談会に、パナソニックからは古賀賢次海外安全対策室長が登場しました。発言を引用しながら、真意を探ろうと思います。


《現地で結婚した社員はどうしようもない》

「国際結婚をされている人たちには任地に留まるか自国に帰るかの選択権を与えた」

という言葉が出てきます。独身時代に海外へ赴任し、現地で外国人の配偶者を得て、家族がいる場合です。この場合、両親のどちらか一方、あるいは両方が亡くなっていたり、親族と離れて暮らしていることも多いので、日本の実家が既になくなっているとなれば戻しようがありません。家族が駐在員本人の母国へ行くことを拒否することも考えられたので、選択制としたそうです。

《高校生の子供は人生が狂いかねない》

「高校生のいる家庭は、日本に帰ってくるには再度試験を受けなくてはいけない、あるいは1学年落とすことになるなど、教育にも人生にも大変影響します」

日本の高校に相当する教育機関、タイであればインター校の10年~12年がこれに該当するほか、日本法に基づく高校としては如水館バンコクインターナショナルハイスクール(ミンブリ区)がありますが、ここは入試が日本の推薦以上に早く(翌年4月から入学希望の中学3年生に対して10月には入試をする)、学年途中で他のインター校や日本の高校から編入しようとしても、開校して日が浅いため、まだ受けられる状況にないそうです。このため如水館の試験に間に合わなかったり、学年途中で親が着任のために編入となるとASEAN圏全体まで視野を広げても早稲田渋谷シンガポール校しか選択肢がありません。現に早稲田渋谷シンガポール校では1年次への途中編入が定員一杯になってしまっているとHPで述べなければいけない状況になっています。

逆に親である駐在員の帰任、ないしは母親の本帰国で退学するなら、そう簡単には日本の高校に編入はできません。随時編入試験に応じてくれる高校は公立にはほとんどありません。あっても学期末とか、年2回とか。私立であれば数校ありますけど、だからと言って即帰国、すぐ受験では子供さんの体がついていきません。ましてや落とされれば最悪。翌年春の編入試験で1学年遅らせ(その時点で留年や一浪と同じ結果になる)たり、一般入試で1年生からやり直せともなればお話になりません。

このため、さすがのパナソニックも現地の高校に在学中のご子息がいる駐在員には、指示を一律に適用することはできませんでした。現地での安全対策が徹底することを条件に、高校の卒業時期まで家族全員での駐在継続を認めたといいます。