2013年5月14日火曜日

ANA、仁川空港事実上撤退の背景は?

ANA(NH、東京都港区)は、この4月から5月にかけて一時運休するとしていた関空と中部セントレアからのソウル・仁川線を6月以降も引き続き運休とすることを決定しました。会社側ではB788の運航停止による機材繰りの関係だと理由を説明していますが、両路線ともANAグループに属するLCC(格安航空会社)が就航しており、LCCの成長を促進することでANA自社便を運航する魅力は今後薄れていくだろうと判断しての事実上の撤退決定だというのが、事の真相のようです。


ANAは1994年(平成6年)の関空開港と同時に関空~ソウル線を就航(当時は金浦空港発着)させ、2001年(平成13年)の仁川開港と同時に移転しましたが、現在毎日4便運航しているアシアナ航空(OZ)や3便運航の大韓航空(KE)と違い、毎日1便から増えることはありませんでした。これは、仁川がANAと同じスターアライアンスに加盟するアシアナ航空のハブで先への乗り継ぎ需要があるのに対し、日本にハブを置くANAにとってはファイナルディスティネーションの一つでしかなかったのが最大の理由です。

しかも、関空は成田と違って、スターアライアンス他社も含めた北米などへの長距離国際線に接続することが難しく、日韓間だけで完結する旅客を相手にしていたのでは、乗客確保も自然と限られてきてしまいます。コストを削減しようにも、ANAは高品質とそれに見合う収益を両立させる本格航空会社の経営スタイルですからそう簡単にはいきません。機材の小型化、食事の簡素化などの努力も限界が見え始めていました。

そこへ一昨年、Peach(MM)が関空ハブのLCCとして設立され、ANAは筆頭株主として絡みます。そうなると、ANA自社運航では黒字を出しにくかった地方発の国際線でもLCCのビジネスモデルに移行することで、採算性を向上できるのではないかという考え方が浮かび上がりました。

Peachは昨年5月、関空~仁川線に就航。12月からは毎日3往復に増便するなど主力国際線の地位を固めつつあります。ANAの持株会社、ANAホールディングス(東京都港区、東証1部上場)は、この状況下でANA自社運航便を継続しても、需要はマイレージ特典航空券や一部マニア層に限られてしまうと判断。ANAでは成田~仁川線でも、もう一つのグループLCCであるエアアジアジャパン(JW)の就航を受けて自社便を廃止しており、この際関空~仁川線はPeachやコードシェアをしているアシアナ航空に任せて、潔く撤退した方がいいのではという結論に至ったとみられます。

一方、中部セントレア~仁川線では、4月からエアアジアジャパンが運航を始めました。エアアジアジャパンは成田と中部を主要空港として強化する方針で、他の日系LCCに比べて出遅れ感のあるエアアジアジャパンを成長させるためには、合弁パートナーたるANAのより強力な支援が必要という認識でAirAsia(AK)と一致。ANAはこの区間の自社運航から事実上、撤退する意向を固めました。