2018年7月2日月曜日

静岡~バンコク直行便開設への布石?修学旅行を誘導へ

富士山静岡空港(静岡県島田市)の完全民間移譲を目指している静岡県空港振興局空港政策課は、来年4月から経営を行うことが決まった東京急行電鉄(東京都渋谷区、東証1部上場)と三菱地所(東京都千代田区、東証1部上場)のコンソーシアムによる提案を実現するため、様々な施策を検討しています。その第一弾として、富士山静岡空港と東南アジアを結ぶ直行便の実現を目指すことにし、需要喚起に乗り出します。

静岡新聞が7月1日付1面で伝えたところによると、静岡県内の学校による修学旅行などのいわゆる教育旅行の分野では、これまでチャイナエアライン(CI=CAL)の静岡~台北桃園線を利用する台湾への旅を喚起してきましたが、これに一定の区切りをつけるといいます。代わって台北線や中国東方航空(MU=CES)の上海線でバンコク(スワンナプーム)まで乗り継いでタイへ足を伸ばすように仕向けて行くとのこと。乗り継ぎでタイまで行く乗客が増えれば、直行便の実現を目指してタイ国際航空(TG=THA)やニュージェン航空(E3=VGO、ドンムアン区)といったタイ側の航空会社に働きかけるといい、県庁の担当者は静岡新聞の記者に

「バンコク線を是が非でも(直行便で)定期運航にしたい」

という意気込みを語りました。

前記事「富士山静岡空港~東南アジア直行便は実現できるのか?で解説しましたが、富士山静岡空港を首都圏第3の国際空港として、広く利用してもらうための努力はまだまだ始まったばかりです。国際線の就航都市も韓国・中国・台湾といった東北アジアの都市ばかりで、東南アジアへの直行となると、世界遺産富士山を持つ観光地の地元とはいえ大型機で運航するのはチャレンジングな面があります。現に、乗り継ぎをしてまで富士山静岡空港に到着したいというタイ側からの観光客はまだまだ少数。直行便乗り入れによって、成田空港や関西空港と組み合わせた訪日外国人観光客向けの周遊ルートを構築してもらおうという期待をかけているのではないかと分析できます。

ですが、直行便を開設するには日本側からもある程度の需要がなければなりません。定期便になる前のノックスクート(XW=NCT)のように、タイ側からのツアー客に依存した片方向チャーター便を定期的に組成していくのは、いくら成田や関空といった大空港でも無理があります。そこで、一度に200人近い流動が期待できる教育旅行で中長距離の需要を喚起し、既存定期便の乗り継ぎで実績を作って「直行便が絶対必要」との判断に導く作戦に出るという訳です。

ただ、タイ側のLCCとして日本に乗り入れているタイエアアジアX(XJ=TAX)とNokscootは共に大型機を使用しているため、富士山静岡空港クラスの地方空港では一度に400人近く乗れる大型機で採算が合うかというと厳しいのも現実です。B737クラシックシリーズでは日本とタイを直行できる航続性能がありませんでしたが、ニュージェンが既に持っていて、ノックスクートも導入を検討中のB738であればドンムアン~富士山静岡間の直行が可能。タイライオンエア(SL=TLM、ドンムアン区)が持っているB739MAXなら文句なしで、どちらにしてもLCC運航に必須の高い搭乗率を維持できる可能性があります。

空港振興局では、教育委員会教育政策課(静岡市葵区)とも連携して8月の夏休み期間中に中学・高校の校長先生ら10人程度の視察団をタイに派遣する予定になっており、早ければ来年度からタイへの修学旅行に出る学校が現れそうです。